そんなとき現れたのは彼の自称親友の少年。

知り合いの老人に頼み、少年は彼の過去を、記憶を見た。



辛すぎる過去だった。


生まれた瞬間に言葉を話し、人を理解した赤ん坊は愛されなかった。

食事はほとんどない。

歩けるようになったとたん働いた。

料理、洗濯、掃除、さらにはサンドバッグ。

愛されたかったから。

その思いで生きた短くて濃い二年。

結局、愛を認識することなく、二年を過ごした。

人格は、完全に破壊された。


三才の誕生日、冷たかった彼の兄と姉が彼を助けた。

彼は打ち解けて行った。

きっとその時過ごした僅か一年が彼の幸せ。

愛される。

ただそれだけが満たされて幸せだった毎日。

ささやかすぎる幸せは脆くも崩れた。

姉が、出産によるショックで死んだ。

失われるはずの記憶を留め、兄は狂い、赤ん坊を守るため彼は兄を殺した。

同じ夜、彼は両親をも失った。

忘れるには長く、思い出にするにはあまりに短い一年。

その代償はあまりにも大きかった。

その代償によって得られたものは、一人の赤ん坊だけ。

幼い彼は、その子をアクアと名付け、独りで育てた。

貴族までとはいかなくても、庶民の暮らしをさせたかったから。

彼は時折血を吐いて、それでも異常なストレスを耐えた。

アクアのため。



でも、そのアクアさえ奪われた。

彼は…