二年前のこと。

幼い悪魔科妖精の少女は毎日地獄に通っていた。

幽閉されている、兄に会うため。

兄は追い払った。

少女の無垢な笑顔を汚したくないから。

兄は、吸血鬼だった。


その地獄に幽閉されていた吸血鬼が神の宮殿へと連れていかれた。

それは端正な顔たちの、16の少年。

連れ帰ったのは、同い年の宮殿の主の娘。


それから時がたち、少年は娘に恋した。

宿命の恋だった。

吸血鬼の恋、叶えなければ、死にさえ至る。

叶わないと、少年は考えた。

娘は宿命を嫌うから。

そして自分は、吸血鬼だから。

端から見れば誰もが羨むその才能を彼が自覚することはなかった。

宿命に彼女を巻き込みたくないと、そういってあきらめた。

優しい彼は、苦しんだ。


神様本人に言われた彼女の婚約者候補の調査。

彼は受けた。

そして、完璧なまでの彼の人柄を伝えた。

それを後押しするほど、彼は優しかった。


酷くなる恋を薬を使って誤魔化し、食事も摂らず、彼は体調を大きく崩す。

それでも彼女を心配し続ける彼は、狂うように優しい。


しかしやがて精神の限界が来て、彼は心中する。

自分の心に閉じ籠り、優しい思い出に彼は浸った。


そんな彼を彼女は自分でも気がつかないほど密かに想っていた。

彼女はずっと彼のそばに居続けた。