「ウィングはいいがアクアはいるか?」

ディアンを抱き抱え、アクアが店から姿を現した。

「はい?あ、お兄ちゃん!」

だいぶ大きくなったアクアは、同じく少し大人びたホセに駆け寄った。

「いらっしゃいませ!」

「ほら、今月分だ…いい繁盛ぶりだな。正直ウィングがここまでやれるとは全く思ってなかったんだ」

「あ、ありがとうございます!全然いいのに…こんなに…」

「気にするな。さぁ、じゃあまたお勧めのをくれるか」

「はぁい!」

アクアは元気よく引っ込んでいった。


ウィングとアクアは三人が大きくなったこともあってレストランを開いたのだった。

ホセは、1か月無料で食わせろと毎月10万ドル以上は金貨を抱えて来るのだが、三食食べても1か月ではそんなことにはならない。

しかも月に3度現れればいいほうで、ほとんどの時は一度しか来ない。

よってこれは体のいい資金援助だ。

「また来たのかよ、義兄さん」

「あぁそうだが?弟の働きぶりを見にな」

「つか、また金?もういいよ、軌道に乗ったしさ」

「気にするな。端数だから」

「十万が端数かよ」

はい、とホセの前にピザを置くとホセは律儀に手を合わせ食べ始める。

「さすがはコックだ。旨い」

「どうも。義兄さんに褒められると嬉しいもんだな」

ウィングはくるくる巻きつつピザを口に放り込むホセを見ていた。

「そっちはどうなんだよ。アクアとかつわりが酷くてさ。クラウンは?」

「問題ないとずっと叫んでる。色々世話を焼きたかったのに」

まあ元気なのはいいことだとホセはにっこりと笑う。

その笑顔に魅せられて一瞬ドキマキしてしまい、ウィングは顔を赤らめた。

「どうしたウィング。トマトの食べすぎか」

「なわけあるかよ。つか、アクアに似すぎなんだって…笑い方」

「なるほどお前はアクアに似ている男が好きなんだな。あーそうか。浮気だろう完全に」

「ちが…お前の顔がきれー過ぎるのが悪いんだよ!この美白好青年が!誰だって血迷うわ!」

「男に告白されたのは9度しかないぞ?その内キスが2回だけ」

「ざけんな結構あるじゃねえか!」

「一桁だけだ」

「じゃあ男女問わずは?」

「好きですが142、付き合ってが120、両方が84、結婚してが342か」

「おいおかしいだろ!最後のなんだよなんで一足飛びに結婚が300越えたよ!」

「結婚したいんだろ」

「分かってるよ!モテモテ越えてるぞどうなってるんだお前の人気!」

「普通だろう。特に俺はNさんのお気に入りだったし…」

「お前今全世界の男を敵に回したな!?」

「うるさい。黙れキスするぞ」

「やめろよ!?」

「するか馬鹿。俺にはクラウンがいる」

「いなかったらしてた的なことを言うな!」

ぜぇぜぇ言いながらウィングは頭を抱える。

「やだからな。俺とお前の距離感がおかしいって疑惑がかけられてるんだよマジで!」

「いっそ一線越えてやろうか」

「お願いしますやめてください義兄さま」

ホセはそんなウィングを楽しそうに見て、なおもピザを食べ続ける。

「だが、お前が実は女なんじゃないかっていうのはアクア公認だ。ほんとのところを教えろ」

「男だよお前ら一体二人でなに話して考えてんだ!」

「そういえば胸がでてきたんじゃないか?包帯巻いといたほうがいいぞ」

「でてねえ!ふざけんなよ巻くか!」

「照れるな全く可愛いなー」

「わざわざ棒読みでいうならからかうな!」

と、そんな楽しい掛け合いの中でむしゃむしゃピザを食べていたホセは不意にニヤリと笑ってウィングに笑いかけた。

「あーん」

「するか!」

「じゃあしなくていいから食え」

「ぜってーなんか仕掛けるだろ…爆発とかする…?」

「するか。ほら問題ないだろ?」

一口含んでにっこりしながらホセが言った。

「そんなに心配なら口移しで」

「いやいいマジでいい」

ウィングは差し出されたピザを食べた。


「うぉかっら!?なんで?なんでこんなことに!?」

「(笑)」

「嬉しそうにすんなよちょ、水…っておいこのやろ!」

ウィングの手からコップを取り上げ、ホセは心底愉快そうににやにやした。

「水、おい寄越せって!」

「頼み方がなってないぞ」

「ふざけんなドS!」

無理矢理奪い取ってゴクッと飲み込む…

「うぎゃぁぁぁ喉がぁぁぁぁ!!」

ホセは嬉しそうに微笑んだ。

「あーあ。水に触れるともっと酷くなると教えてやろうとしたのになー」

「こいつ!鬼!」

ウィングはちっとも止まらない涙を拭いながら叫んだ。

「ほらこれを食ったら楽になる」

ウィングは藁にもすがる思いでそれを食べたのだった。