おめでとうございます、と口々にかけられる言葉に会釈を返しながら、ホセは一人そっと微笑んだ。

「やあ、ジュエル君。おめでとう。君に会いに大勢ファンが詰めかけてるぞ」

「Nさん…ありがとうございました、お陰でこの場にいられる」

「そんなことはない、力添えはしたが、君の力だよ」

「…いえ。そんな…ああ、そう言えばゼロさんたちはどこに?」

「ああ、彼らならずっと泣きっぱなしだ。アンドロイドのどこからあんなに水が出てくる事やら」

「ロメさんも?」

驚いたようにホセは聞き返した。

ロメはゼロを追っかけ回すNの娘だが、表現がオーバーなわりにドライな性格をしている。

「ああ、君を実の弟のように思っていたからね。なにか思うところがあるんだろう」

「…ゼロさんがどうしても駄目だったときの保険だった気がするんですが」

「あはは、君は面白いな本当に。それと聞き飽きただろうが言っておくよ、ホセ」

親しみを込めてそう呼ばれて、ホセは背筋を伸ばす。


「結婚、おめでとう」

ホセは微笑し、はい、と涙を拭った。