「まーまー!」
「ぱーぱー」
「ままー!」
女が一人、男が二人。
可愛い三つ子の内二人を背負いながらウィングが言った。
「にしてもさ、仮にも片親だったことなんてコロッと忘れてやがるもんな~すっかり馴染んでやがる」
アクアはにっこりして、よじよじ上ってきた男の子を抱き上げた。
「本当ですね、嬉しいです。しかしもうこの子たちの顔を見ることができないのが何より辛いです…もうウィングの顔とか見飽きましたけど」
「おい!何言ってくれるんだよアクア!あ、こらサフィー!引っ張るな!」
「ままいじめちゃだめー!」
「いじめられてるのは俺の方だよもう!」
「いじめちゃだめー」
「ああっ!こらアレクまで!」
アクアはくすくす笑いながら、なおもディアンを撫でる。
「ディアンは大人しいです、もっと甘えていいのに。お兄ちゃんたちと遊んだら?」
ディアンは小さく丸くなって灰色がかかった黒の髪をするするアクアに押し付けた。
「アレクらんぼーするからいやですー」
アクアはそうなの、と笑った。
暴れまわるアレキサンドライトは三つ子の中でも一番年上で、活発だ。
それに続くサファイヤ、通称サフィーは本好きなのはいいのだが、広場のお花よりもボールで遊びたいらしい。
そんな兄と姉に真っ向から対立するオブシディアンの名をもつディアンは引っ込み思案で、トロンと垂れた瞳はアクア譲りだ。
どういう訳か灰色かかった髪には色彩というものが感じられない。
つい最近会ったホセの容姿が豹変していて、それがディアンに似ていたのでああなるほど突然変異かとウィングは納得した。
「おいアクア、どうするんだよもう本当に時間ねーんだから」
「大丈夫ですよ、すぐつきますし」
直接繋がるワープストーン貰ったじゃないですか、とアクアがのんびり言った。
「こいつら着いても大人しくできねーぞ…」
「大丈夫ですってば、お兄ちゃんがちゃんと面倒見るって言ってくれてますし」
「あぁ!?主役の一人がそんな裏手にまわってどうするんだよ!」
お兄ちゃんこども好きですしねー、とアクアが言った。
「もうそろそろ出発します?」
「いくのー」
「いくのー?」
「いきたくないー」
「…」
いくか、トラブルありそうだし。
そしてウィングたちは、お花畑にポツンと建った一軒家から、神界の宮殿へ飛んだ。