「久しぶりです、クラウン」
「おひさ、クラウン」
久しぶり。
アクア、ウィング。
私たちはそれだけの挨拶を交わして、静かになった。
沈黙を破って、ホセは淡々と全てを進めていく。
「痛みはない。苦痛もない。ふと眠気が襲って来て、それだけだ」
カラン、と音をたてた氷の入ったガラスのグラスにホセは静かにシロップを注ぎ入れた。
「一口でいい。飲み下せ」
それと、とホセはアクアに、少し迷って小さな箱を渡した。
「お前の両親だ。…あの世にいっても、顔がわからないんじゃ会えないからな」
鎖のちぎれた金色のロケット。
「持っていけ、アクア」
お守りだ、とそういってホセは笑おうとした。
笑ったつもりでいた。
アクアは蒼白な顔で、それでもホセよりはうまく微笑んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん」
そしてソファに歩いていき、座っていたウィングの隣にポスッと腰かけた。