パーフェクトフィアンセ


「なかなかショッキングな映像でしたね」

「…俺には今の状況の方がショッキングなんやけどな」

タイムスリップした二人は“時空の狭間”が元に戻り、こっちの世界に来ていた。

それはいい。

何の問題もない。

問題は戻った場所だ。

何を思ったか時空の神様はただいま絶賛大パニック中の最高神様の住むお城に飛ばされた。

当然のようにとっ捕まり、地下牢に放り込まれていた。


いや、それもいい。

何故ならアクアがどこからか取り出した針金で牢を開けたからだ。

そのアクアは腹ごしらえにどこかへ行った。

問題はもっと大きい。

そう、もっと…


「あのな、おかしくなる気持ちはわかるけどな…」

“御娘様失踪事件”

そう命名されたこの神界始まって以来(?)の大大大事件。

ある日突然ホセが血相を変えてクラウンがいないと騒ぎ立てたらしい。

本人は延々泣き続け、数回(あきらかに少なくサバを読んでいる)自殺未遂。

薬物依存、アルコール中毒。

さらには重度の鬱と診断されて強制的に自室に軟禁されている。

といっても自分から閉じ籠っていることがほとんどなのだ。

たまにふらふら出てきては薬だなや酒樽に居座っているので城の人間は頭を抱えている。

悩まし気なところもかっこいい、と黄色い悲鳴を上げていた使用人たちも夢遊病か何なのか、夜な夜な徘徊しているホセを見ては気味悪がっている。

それでもたまに正気を保っているときもあって、その時は精力的に御娘様探しに尽力している。

そんなこんなでほとんど閉じこもっているホセをわざわざおこしに行くようなもの好きは誰もいないのだった。


「あ」

と、目の前には噂のホセ。

端正な顔には酷い隈ができて、暗く落ちくぼみ、唇も真っ青だ。

頬は土気色で血が通っていないよう。

ふらふら歩いている姿は廃人やゾンビと並んでも大差ない。

ただ忘れてはいけない。

格好いい。

「あ~…この度はどうも御愁傷さまでございました…」

「…」

返事一つなく、ホセは暗い瞳でウィングを見返す。

「アクア…」

「ああ、アクア?そんなら腹が減ったって言って…」

「会いたいか…?」

「は?」

あっけにとられた瞬間にホセはウィングを担ぎ上げ、魔法陣を展開してどこかへとウィング共々消えた。