「そういえば… お名前聞いてなかったよね?」

彼女は微笑ましく 僕に問いただす。

「 あ… そうだったね 『宮下 晴』。僕の実名です…。」

一瞬真顔になる彼女。 それは直ぐに笑顔へと変わる。

「ははっ!! 晴くんておもしろーい。 実名じゃなかったら偽名使ってることになっちゃうよー 」

僕は 恥ずかしさのあまり下を向いてしまう。

「ごめんなさい っ… 私は 『遠藤 葉菜』 。
私も実名だよ!」

彼女は可笑しそうに笑う。

「遠藤さん… やっぱり僕を虐めてますよね…?」

「そんなわけないよ!!だって実名なんだからさ!! 」

「もうその単語発するの禁止にしてもらえませんか… 」


『遠藤 葉菜』 遠藤さんとこんな楽しい会話が出来るなんて思ってもみなかった。


とても 距離が縮まったと実感した。

でも、 こんな素敵な人と 僕なんかがつるんでいてもいいのだろうか…
遠藤さんの価値観が下がらないのだろうか…

周りの目が気になって仕方ない。不安で、 仕方がない。