『(やっぱり…)』


一年の靴箱を遠巻きに見る人がちらほらと…
原因は恐らく

「あ、篠目!」

彼である。


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『いっ、る…蓮司くん、どうしたの?』

「あー、その、一緒に帰ろうと思って」

『(唐突だな)い、いいけど』

「まじか、誠のやつ早退しやがったから」

口を尖らせてふて腐れる蓮司くんは、靴先をトントンとならして、

「帰ろーぜ」

と言った。

『(距離近いな…色々な意味で)』

何て、思ってたのと同時に周りが私をじろじろ見ていることも察した…。

「誠以外と帰るのは初めてだな」

『えっ、そうなんだ』

ふと顔をみれば(というか身長差的に見上げれば)蓮司くんは少し悲しそうな顔をしていた(ように見える)

「いったろ、誰も寄ってこねーからさ、だからお前がこうやって普通に話してくれるのが嬉しいんだ」

『………………………………』

「誠はさー、俺の幼なじみみてーなもんだから昔からつるんでるけど…」

一人は寂しいんだよなァ

校門付近で蓮司くんは立ち止まってそう言った。

『えっと、どうしたの?』

「あーいや、お前ちっせぇな」

『!?』

「あ、わりぃ…身長差あるから歩くのゆっくりの方がいいかと思って」

『あ、あぁ…私…身長152cmなんだ』

「小柄だな…俺はー、確か178か179だな」

『(でか!)そ、そりゃこんだけ身長差できるよね』

「まぁな、つか歩くの早かったろ、ごめんな」

『あっ、いいよ!全然大丈夫!』

謝られると怖いんですけど

「そっか、あ…荷物かせよ」

『(かせよ!? !!?)えっ?』

「おもそーだから」

『……!だっ、大丈夫だよ!』

「一個くらい持つ、つぅか、女子って持ち物多いな」


私の手からひょいっと鞄をとって蓮司くんは歩き始めた。

『ごっ、ごめんね蓮司くん、ありがと!』

どうやら彼は怖い雰囲気で誰にも寄ってこられない事を悩み寂しがっている男子らしい。

「いーって、やっとできた友達だからとことん大切にする」

『………………………』

「どした?」

『いや、なんでも!』

知り合って一日もたってないけど、まだまだ彼のことは怖いんだけど、なんかときめく所がちらほらと…



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「じゃ、また明日な」

『うん、わざわざ家までごめんね…また明日…!』

じゃーなー、と大きく手をふる蓮司くんを見送って私は玄関をあける。

『ただいまーっ』

「おかえり」

『うわぁ!お、おかーさん』

「ちょっとあんた、さっきの男の子だれ?」

『えっ、あ、今日友達になった子で入間蓮司くん…』

「そう、あの子目付き悪いけど中々よさそうな子じゃない!逃がしちゃダメよ」

心なしかお母さんの目がギラギラしてるようにみえないこともない。

『な、なにいってんの!友達だよ?』

「ふふん、おかーさんセンサーは敏感なのよ」

『なにそれ…』

お玉片手にニヤニヤするお母さんはさながら獲物を見つけた動物みたいな。
いやいやそんなこと言ったらご飯抜きにされそう。

『(たしかに優しいところはあるけど…まだ初日だもん、友達だもん)』

「ご飯できたら呼ぶから、やることしときなさいね」

『はーい』

お弁当箱をキッチンにおいてから、階段を上がって自室へ。

荷物を置いて着替えながら私は蓮司くんの笑顔を思い出してみる。

『(噂はこわいけど…なんだろ、根は悪くない、みたいな感じなのかな)』

明日、彼に聞いてみようか。
顔面血まみれの真相を

でもそれで逆上されてボコボコとかやだ。


『なにこの複雑な気持ち』