「もしかして……椿姫……さん?」
私がおずおずと聞くと、尼さんは微笑んで頷いた。
そして、落ち武者の方へと向く。
「津太郎さん。あなた、私と他の女子の区別も付かないんですか?」
「つ、椿姫……どうしてここに……。」
いつの間にか、落ち武者は立派な武士の姿になっていた。
「貴方を思って散々泣いたわ。だけど、どうしても貴方は戻ってこない。
だからせめて、貴方が安らかに眠れるように私は尼になったのに……」
「そ、それはお前が約束を……」
そこまで言って、津太郎は涙を流した。
「分かっては、いたんだ……お前が約束を守れなかったのには理由があるって……
だけど、許せなかったんだ……」
尼さん、津太郎の手を優しく握った。
「……もう、全て終わったことよ。さぁ、行きましょう……。」
落ち武者は、椿姫の胸元に顔を寄せて泣いた。



