石の効果なのか、いつもよりもハッキリと落ち武者が見える。
怨みと悲しみに満ちたその表情……。
「許さぬ……許さぬ……椿姫……何故……私を見捨てた……」
椿姫……?
般若心経を読み終わり、苦しんでる落ち武者を見つめる。
「ねえあんた、椿姫って言った……?」
「椿ちゃん?どうしたの?」
直人は心配そうに私の手を握る。
落ち武者は今床に近いところにうなだれている。
こんな様子、初めて見たわ。
「許さぬ……許さぬ……」
「私は椿姫じゃないし、椿姫は多分、貴方のことを思って尼になったわ。気づかなかったの?」



