スズメには夢があった。



スズメは自由になりたかった。



もっと、もっと、高いところへ。



スズメは空を飛べたが、空のすべてを知らなかった。



曇った空の向こうには、きっと蒼い空がある。



スズメは小さかったが、その夢は大きかった。






カラスはスズメに言った。



「自由になりたいのかい?」



スズメはこたえた。



『あぁ、僕は夢を叶えてみせるよ。
 
 この翼で雲の向こうまで飛ぶんだ!
   
 僕にだってできるはずさ!』




カラスはスズメにこう言った。




「いいことを教えてあげよう。
 
 西に、大きなビルがあるだろう。
  
 そこへ向かってまっすぐに飛ぶんだ。
  
 スピードを落としてはいけないよ。
 
 実はそのビルはね、雲の上と繋がってい   るのさ。通り抜けられるんだ。
 
 君の気持ちが強ければ、

 きっと成功するよ!」













スズメは空を飛んでいた。



西のビルに向かってまっすぐに。



ビルが近づいてくる。



スズメはスピードを落とさない。



ビルの窓が近づいてくる。



スズメはスピードを落とさない。



____僕は行くんだ。
  この翼で。
  雲の向こうへ。
  もっと、もっと、高いところへ!____



















最期に見たのは、















窓ガラスに映った、スズメの希望に満ちた顔だった。













カラスは、夕日に照らされたスズメを見てこうつぶやいた。



『嘘をついてごめんよ。
 
 その夢が叶わないってことを

 君には知って欲しくなかったんだ。』













スズメは希望に満ちた顔で死んでいった。




スズメの夢は壊れなかった。





しかし、その翼は折れていた。