「なぜ長谷川さんはあんな風になったの?」
「…………」
「答えなさい」
「…………」
「な・ぜ長谷川さんはあんな風になったの?」
「……それは……」
「それは?」
私たちは職員室で、矢那瀬先生の尋問を受けていた。
あまり説明できる話じゃない。
「どうして、長谷川さんが意識を失う必要があったのかしら?」
「…痴情のもつれ、と言いますか、なんと言いますか……」
「何かあったの?」
「……少しな、…長谷川さんと言い合いというか、一方的に言われまして」
「何を言われたの?」
「…『あんたなんか嫌い』って、言われました」
「はぁ…」矢那瀬先生はため息をついた。
「嫌いって言われる程の理由があなたにはあったのかしら?」
「……えっと」
「長谷川さんと菊崎さん、それと大橋さん。
あなたたち二人は仲がよいけれど、長谷川さんとはあまり接点ないでしょう」
「そうなんですけど…、間接的に知り合いなんです」
「へぇ」
「その、長谷川さんは茜のことを逆恨みしてるんです!」
ずっと黙っていた紗菜が口を開いた。
「前に長谷川さんと園川くんは交際していたんです。けれど、今は茜と園川くんが交際しているんです!
だから元カノがなんか今さらしゃしゃり出て来ているというか、なんというか。
とりあえず言い合いなった理由に茜は悪いところはないんです!!」
紗菜の目はマンガに出てきそうな、ぐるぐるの目になって焦っていた。
すごい早口になっている。
矢那瀬先生でさえ、口をあんぐりと開けて驚いていた。
「だから茜を攻めないで下さい!!」
「…………」
「……えっと、ありがとう、紗菜」
「ありがとうじゃないでしょ、茜!
もっと言い返しなさいよ!」
「す、すいません」
「とりあえず、落ち着いて、大橋さん。
わかったから。まだ長谷川さんが意識を取り戻してないらしいから」
「……長谷川さんは今病院に?」
「ええ。そういえばあなたの両親もうすぐ到着するそうよ」
「えっっ」
ホントに終わったかも………。

