ほんとはただ、奈々ちゃんと一緒にいたくなかっただけなんだけど。

「あっ、茜」

後ろを振り返ると、紗菜だった。

「ひとり?園川くんは?」

「先に帰っちゃったんだって!」

「え?まだ野球部練習してたよ」

「うそ!」

「いや、ほんと」

「…………」

さっき奈々ちゃんは、先に帰ったって言ってた。

紗奈が言ってることが本当だったら、奈々ちゃんが言ってたことは嘘になる。

「ソフト部と野球部グランウンド反対だから見えなかったの?」

「………」

「ていうか、誰に聞いたの?帰ったなんて」

「……長谷川、奈々」

「え?あの子に聞いたの?」

「うん…」

「あー、あの子はあんまり性格よくないから信じない方がいいよ」

そして、私は叫んで、校門に向かって走った。

「あのアマァァァァァァァ!!
ブッ飛ばす!」

「茜!?
ダメだよ、女の子に乱暴しちゃ!」

紗奈の声が後ろから聞こえたけど、振り返らない。

私は下校中の生徒を掻き分けて走りまくった。


許さん!あの悪女!