陽太はすぐには来なかった。
遅いな…。
確かに野球部はまだ練習してたけど、もうそろそろ終わってるはずなのに。
「茜、まだ帰ってなかったのかよ?」
佐織たちが歩いてきて話しかけた。
「うちらより早く出てったくせに~」
「陽太がまだ来ないから待ってんの」
「先に帰ってたっていうオチを期待する」
「そんな悲しいオチいらないから」
じゃあね~と別れの挨拶を交わして、私は一人で陽太を待っていた。
いつも遅いテニス部の紗奈も先に帰っていった。
遅い。
さすがに遅すぎる。
「あ」
そんな間抜けた声を出したのは私だ。
そして、その声を向けられた相手は、
「あ、菊崎さ~ん」
陽太の元カノ。
「まだ残ってたんだ~」
長谷川奈々ちゃんだった。

