「今日は皆で鬼ごっこをしまぁす!
お兄ちゃんとお姉ちゃんたちから鬼でーす」
よーいどん!という声で、園児たちはあらゆる方向へ逃げていった。
「あ、あの志村(しむら)先生…」
「なあに?菊崎さん」
先生の甘い声に、私は園児じゃないぞ、と微かに怒りを覚える。
「園内 まで入っちゃってる子が結構いるんですけど、いいんですか?」
「いいわよ。敷地内ならどこでも」
「マジすか」
「ほら、鬼さん行ってらっしゃい」
背中を押され、その勢いで走り出す。
私達四人は自然に固まって探した。
団体行動みたいだ。
「あっ、いたっ」
「4人みーっけ」
一番足の速い優太が走り出した。
「待てーい!!」
「マキちゃん、そっち行って!
挟み撃ちしよう!」
「おう!」
私と優太が正面から行き、マキちゃんが奥から回り込む作戦だ。
良かった、こういう時に速い足が役に立つ。
「わぁ~。お姉ちゃんたち速いよお」
「まさとくんときららちゃんと、みなみちゃんとなぎさくん鬼ねー!」
一気に四人捕まえたことで、私達は全員鬼では無くなった。
そしてその場からすかさず逃げ出す。
「あれ?私は何もしてなくない?」
「いーのいーの。紗菜がいるだけで園児たちは固まってしまうから」
「ナニソレ、悪口?」
「うーん、強い味方だなーって話」
ほんとは、男の子も女の子も紗菜に見とれてしまって動かなくなるのだが。
自分の美しさを自覚していない紗菜に行っても意味がないから言わないけど。
「お姉ちゃんたち待てー!」
「わっ、意外と速い!」
さっき鬼になったまさとくんが追いかけてきた。
「ま、ハンデってことで俺たちは固まって逃げてやろうぜ」
マキちゃんが言った。
「そうだね、その代わり、速さには手加減しないっていうのはどーお?」
「それいーな」
そして私達は、どんどんと加速していく。
制服のままだから走りにくいけど、保育園児相手なら充分だ。

