「夢?」

「昨日、陽太が寝てるときに、私の名前を呼んだの」

確かに茜、と呼んだ。

「その後に、奈々とも言った」

「えっ…」

「『待って、奈々』みたいなこと言ってた。
ねえ、なんで?」

思いきって、陽太に詰め寄る。

なんで?なんで?
なんで、私の名前だけじゃなかったの?

よりによって、なんで元カノの名前なんて呼ぶの?

「何の夢、見てたの?」

「……なんか思い出した」

「え、」

「俺の家に、茜がいて、なぜかそこに奈々もいて。
奈々が茜を銃で突然打とうとしたから、止めた夢見てたかも」

「は?」

「茜を守った夢だった気がする」

「は?」

「うん、そういう夢だな」

「え、は?え?」

「あー、怖かった」

怖かった、じゃなくて。

イヤイヤイヤ、何?私の今までの不安は一体、何だったの?

「ホントにそれだけ?」

「うん、そうだよ」

「え、あ、ソウダッタノネ」

なぜだか棒読みになった。

まず、最初にわきあがった感情は恥辱だった。

恥ずかしい!
めっちゃハズイ!

結構悩んでた自分がバカみたいだ。

「何?ヤキモチ妬いてくれてたの?」

「違っ、そんなんじゃない!」

「へー、ふーん。そーなのかー」

急に唇を塞がれた。

「んっ」

「素直に言えばいいのに。
ヤキモチ妬いてたのって」

「だって、そんなの…」

「ん?」

「迷惑、でしょ?」

好きな人に嫌がられるのが一番、嫌。

落合先生のときにずっと思ってた。

鬱陶しいとか、めんどくさいとか。
思われるのが一番嫌。

「迷惑なんかじゃないよ」

「え?」

「逆に嬉しいから、大丈夫。
俺のことそんなに好きなんだってわかるから嬉しい」

そんなことをヘラっと笑って言うから腹が立つ。

ホントに嬉しいんだな、って分かってしまう。

「……あ、そう」

「うん」

ニコニコと笑う笑顔が可愛くて思わず、視線を反らした。

「安心してヤキモチ妬いて、これからは」

「………まず、ヤキモチ妬かれるようなことしないで」

「そーだな」

また笑うから、こっちが照れる。

ヤキモチだったのか、と気づくと顔が赤くなった。