気づけば8時をまわっていて、陽太の両親も帰ってきたので私は帰宅した。

「……はあ…」

陽太が夢の中で呼んでいたのは、奈々ちゃん?
それとも私?

胸のもやもやが止まらない。

でもなぜだか涙は出なかった。

たぶん自分の頭がもう諦めてしまっているから。

元カノの名前を呼んだ。
それなら私の居場所はもう無いのかもしれない。
いや、とっくに私の居場所なんて無かったのかもしれない。

『割りきれ、大人になれ』

こんなときに落合先生に言われた言葉を思い出した。

「大人になんて、なれないよ…」

割りきれたら私は大人なの?
割りきれなかったら私は子供なの?

今更落合先生に心で訊いても、答えは返ってこない。


どれが正解なんですか、落合先生…。

なぜだか無性に落合先生に会いたくなった。