「陽太、起きてる?」

ノックをしてからドアを開けると、ベッドで寝ている陽太の姿があった。

なんでか知らないけど、布団の中できょうつけしてるし。

「オムライス作ったのに…」

まあいいか。

あとでレンジで温めればいいことだし。
あ、でも薬飲まなきゃいけないから食べてもらわないと困るか。

「陽太、起きて」

ゆすっても起きない。

「ほら、オムライス、冷めちゃうよ…わっ」

急に手を引かれて、ベッドに引きずり込まれた。

「茜…」

「ちょっと、陽太、何してんの。早くご飯食べて」

「ん~」

無理矢理陽太から離れて布団の中から出る。

起き上がって座った陽太に
おぼんにのったオムライスを渡すと首を横に振った。

「え、いらないの?」

軽くショックなんだけど。

「いるけど、食べさせてくれたら食べる」

なにこの人。いつもと違いすぎでしょう。

あまりの可愛さに唾を飲む。

「あ」

口を開けてるけど、私には食べさせてあげるという観念が全くなかったので戸惑う。

「…いつも槇田ってヤツにやってんだろ。俺にもして」

「…………っ」

マジか。
ここでそのネタを引っ張り出してくるのか。

私は渋々ながらも陽太に食べさせてあげることにした。

「じゃあ、口、開けて」

「あ」

いわゆる、《あーん》の食べさせ方は意外と恥ずかしい。

マキちゃんは友達、陽太は違うから…。

食べさせてと言った本人も赤くなっている。

「……なに赤くなってんのよ」

「……お前の方が赤い」

「うるさい」

「いてえ、ほっぺつねんな」

「……でも、予想以上に恥ずかしかったでしょ、これ」

「ああ。そうだな。やってって言ってやってもらうのは今後やめておく」

「私もそう思う」

自然と笑みがこぼれる。

陽太の顔は熱で赤くなっているか、感情的に赤くなっているのかわからなかった。