「茜、お前はなんで槇田とそんなに仲がいいんだ?」
優太が私の前で仁王立ちして言った。
よくわからなくて、陽太に助けを求める視線を送っても「俺もよく意味がわからん」と首をふった。
「な ん で、そんなに仲がいいんだ?」
優太がもう一度訊いた。
「だって、マキちゃんとは同じクラスだし…」
「マキちゃんじゃなくて、ちゃんと名前で呼べ」
「…槇田俊輔くんとは、同じクラスで席がお隣さんだからです」
「ホントにそれだけか?」
「それ以外に何があるって言うの」
「よろしい」
なんだこの事情聴取みたいなことは。
私、なにもイケないことなんてしてないのに。
なんだか悪者になった気分だ。
「そして、その仲のよい槇田に茜は『あーん』してアイスを食べさせた。違いますか?」
「違わないけど、ナニコレ。
何が聞きたいの、優太くん?」
「俺にはそんなんしたことないくせに」
ボソッといつもより低い声だったから聞き取れなかった。
「ん?なに?聞こえなかった」
「……別に、聞かなくてよかったよ」
「あっそ」
「じゃあ、俺がしてもらおっかな~」
ずっと黙って話を聞いていたと思ったら、急にニヤァと笑って陽太が入ってきた。
「何が、何をしてもらうの?」
「だからー、俺が茜に『あーん』してもらおっかな~、と思いまして。
アイスじゃなくていいけど」
「は?ナニソレ?意味わかんない。
つーかあんたみたいなヤツに食べ物与えたくない」
「ひでーな、俺飢え死にしちゃうよ」
「すれば。飢え死にとか長い時間いらないから毒飲んで今死んじゃえば」
「毒舌ですなぁー」
「え、なに?なんかニヤニヤしてるんですけど。この人、変態ですか?私に罵声浴びせられて喜んでるバカがいます」
「喜んでねーし。変態じゃねーし。バカじゃねーし」
「じゃ、なんで私があんたに『あーん』しなきゃイケないの」
「え?だって俺、お前のこと好きだもん」
「はっ?ちょっ…」
かあっと体の体温が上がった。
こんなところで言わなくても…。
しかも優太の前で、とかホントに恥ずかしいわ。
「好きだから、好きな人に『あーん』してもらいたい、なんてダメ?」
覗きこんで言った。
ぐっ…。
顔が近い。
心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。
すると優太が私たちの間に入ってきた。
「待てーい!!」
た、助かった…。
心臓がちょっとやばかった…。
「陽太?なんでそんな抜け駆けみたいなことをしているのかな?」
「抜け駆け?そんなんないだろ。
あ、なに?それとも悔しかったのかな?
好きな人盗られそうになって」
「………っ」
なんだこれ。
私の話をしているはずなのに、私が一歩も入れる状況じゃない!
二人の距離はどんどん縮まって、優太なんかは、もうすぐで拳が出そうな顔をしている。
「ちょっと!ケンカはしちゃダメだよ!」
「じゃあお前はどっちにするんだ?」
「え?何が?」
「俺と優太、どっちを取るんだよ。
もうそろそろはっきりしろよな」
ええええええええ!?
そんな本人の目の前でやるの!?
キツくない、これ。
「はっきりしろと言われましても…。
すぐには決められないし…」
「じゃあ待つから、考えて」
優太が言った。
「俺達、夏休み終わるまで待つから。
その間に考えて、お願いだから」
「え、もう夏休み2週間で終わりますけども…」
「うん。だから始業式の日に学校終わった後にまたここ来るから。
そんときに言ってよ」
「う…」
「決定な」
「…はい」
夏休みって、短いなーーー!

