「今日ね、マキちゃんに会ったの」
「マキちゃんて誰だよ」
「同じクラスの人。
それでね…」
私たちの空気は一変して、明るくおしゃべりタイムとなっていた。
そして今日マキちゃんと会ったことを話した。
「本選んであげただけでアイスおごってくれたんだよ、しかもハーゲン」
「マジで、したら俺も着いてったのに~」
「優太、あんたが着いてっても何も役に立たないでしょうが」
「役に立つよ、俺」
「例えば?」
「……荷物持ち!」
「その役割はいらねーだろ。ただのパシりじゃね」
「それに家まで送ってくれたしね」
「え、女子同士で遊んで家まで送るの?」
「は?なに言ってんの」
「いやだって、そんな男みたいなことする男前な女子いるのかっていう…」
陽太が言いかけて最後の方は自信がなくなったのか、声が弱くなっていた。
「ともかく、マキちゃんってのは男みたいだな」
「は?なに言ってんの。
マキちゃんは男だよ」
「「はい?」」
二人が揃って、気の抜けたような声を発した。
「待て待て待て。
マキちゃん?は男なのか?女じゃなくて?」
「そーだよ。正真正銘、男」
「…フルネーム言ってみて」
優太が何か、怯えたような顔で訊いた。
「えっと、確か槇田俊輔?だったような気がする…」
本名で呼んだことがないので思わず疑問符が付いてしまう。
ゴメンよ、マキちゃん。
「え!?マキちゃんって…俊輔のことだったの!?」
「え、優太しってんの」
「知ってるもなにも、同じバスケ部だっつーの」
そういえばそうだった。
「つーことは、茜はその槇田ってヤツと1日デートして、アイス交換したのか?」
デートじゃないし、アイスは交換したわけではないが、否定するのがむしろ面倒だったので、
「そういうことだね」
と、答えた。
「オーマイガッ!!」
優太が両手で頭を抱えた。
私、なんでこの人のこと好きとか思ったんだろう…。
そんなことが今更、浮かんできてしまう。
「何?どうした?
頭おかしくなった?」
「陽太、どうする?」
何か、二人でひそひそ話を始めた。