戻ると、優太はすねて向こうを向いていた。
陽葵は申し訳なさそうに、こっちを見ていた。

「……俺は悪くないからな」

「おっ前、またそんなこと言ってんのか。
茜に一回謝れよ」

「やだね」

「いいよ、もう。
別に怒ってないし」

「嘘だ…。
目が笑ってない」

二人して怯えた顔をしていた。

何?私、そんなに恐い顔してるの?

「…もしかして、泣いたのか?」

陽葵が訊いた。
その言葉を聞くと、また涙が制御できなくなりそうになった。

「な、泣いてなんかないし。
私、泣かないし」

「嘘つけ。泣いただろ。
ここ、腫れてるぞ」

陽葵の手が、頬に触れた。

「ごめん、そんな泣くとは優太も思ってなかったんだけど…」

「違うって。
私、泣いてなんかないってば」

手を振り払って、笑った。

笑わなきゃ。

私が泣いたって、落合先生のことはどうしようもないんだから。

泣いたって、忘れることもできないし、取り戻すこともできやしないから。


今は笑うんだ。


周りにいる人に迷惑をかけないように。
不安にさせないように。

心配させないように。

可哀想って思われないように。
こらえて、笑うんだ。

「大丈夫だから。
何も心配しなくていいよ」

「…前に言ったろ」

優太が急に口を開いた。

「前に、お前がけがしたときに泣けって言ったろ。
だから、今日だって俺達前でくらい、泣けよ」

「……………っ」

涙が、出そうになる。

泣かないって決めたのに。
落合先生で泣かないって決めたのに。

「……優しく、しないでっ」

「優しくするよ。
お前だから。
…泣いてる理由、話してくれないか?」

陽葵が、少し背の低い私を覗きこんで言った。

今更、優しくされたって。
誰かに優しくされたって。

意味がないんだ。

泣いてる理由なんか話したって、意味がないんだ。

わかってる、わかってる。

だけど、私は勝手に言葉を作って口にしてしまう。

「私、失恋したの…」

こらえきれなくなった、涙の雫が零れた。
大粒で視界が、ぼやける。

何も見えないから、逆に話しやすくなって、私は饒舌になってしまう。

「フラれてから、泣かないって決めたの。
だから、泣くわけにはいかないけど…」

うわあああん、と小さい子供みたいな泣き声が出てしまった。

大声を出すのは我慢して、小さく嗚咽だけを漏らすように我慢した。