「お前、着替えんのおっそー」

「早く着替えろよな」

なんだこいつらは。
人が浴衣から着替えた瞬間に態度が一変しおった。

私のドキドキを返してください。

ていうか、さっきまでこんなやつらにドキドキしてた過去の私を消してください、神様。

「………」

「最近の少女マンガっておもしろいんだな~。
久々に読んだ」

「…あんたたち、私の家だからってエンジョイしすぎでしょうが」

「あ?お前の家じゃなくてもこんな感じだぞ」

「うわ、礼儀なさすぎ」

二人してベッドの上に寝転がっていたので、本気で引いてる目をした私。

つーか、女子のベッドに寝てる時点で、デリカシーが欠けすぎている。

「お前こそどうなんだよ、茜」

「は?私?
私はいいでしょ。自分の家だもん」

「そういうことじゃなくて…」

陽葵が苦笑した。
私の何がおかしいのだ。

「お前はよ、今のカッコを鏡で一回見てこい」

今の私の格好は、膝上20cmくらいの紺色のショートパンツと、白のタンクトップである。

私の部屋着だ。

「なんかおかしいかな」

「おかしいじゃない。
TPO考えろ」

「はあ?」


意味がわからない。


外でもないのに、なんで自分の家でそんなこと考えなきゃいけないんだ。

「じゃあ、はっきり言ってやろうか?」

「何よ?」

「怒んなよ」

「早くして。何が言いたいの」

「……おっぱい見えるぞ」

「バッ…」

私より先に陽葵のグーがとんだ。

何を言い出すのかと思えば…。
前言撤回だ。
この人、全然大人になんかなってない。

「だって、ホントのことじゃんか!」

「お前なあ、言っていいことと悪いことがあるだろう」

「見えそうだったから注意しただけだ!」

「注意じゃねえよ、立派なセクハラだよ」

優太が涙目になりながら訴えたが、それは陽葵にすぐおさえられてしまう。

被害者(?)の私は会話に入れずにただ、唖然としていた。

「…茜」

陽葵が呼んだ。

「とりあえず、上着着てきて」

顔が真っ赤だ。

陽葵も意識していたのかもしれない。
優太とは違って、口にはしなかったけど。

「う、うん。わかった」

そう言って部屋を出て、リビングに置いてある、半袖のパーカーを取った。

すぐに戻るのもなんか気まずくて、階段に座り込んでため息をついた。

やっぱり、あの二人だって《男》なんだ。
《男の子》なんかじゃなかった。

落合先生と同じなんだなあ。

そんなことを思うと、悲しくなって、涙はこらえた。