「うまっ」
優太がチャーハンを食べて、そんな嬉しいリアクションをした。
「ああ。うまいわ。
茜はチャーハンだけはうまく作れるんだな」
「チャーハンだけじゃないし。
オムライスとしょうが焼きだって作れるし」
「じゃあ今度食べに来るよ」
「お一人様、5000円からとなっております」
「たけーよ」
3人とも食べ終わって、私は洗いモノを済ますと、2人は勝手にゲームを始めていたのでそこに向かった。
「わ、懐かしー。
久々にゲームだー」
「うわあ!!
陽葵、めっちゃ強い!」
ババーンと音がして優太が使用していたキャラクターが倒れた。
「くっそー。悔しいぜ。
そーだ!茜、替われよ」
「えっ、私!?
やだよ、めんどくさい」
「めんどくさいとか言うなよ。
やってみろって」
しぶしぶ優太からコントローラーを受け取って、私はゲームに参加した。
2分後。
「強いです!茜選手、めっちゃくちゃ強いです!
おおっと!?陽葵選手、HPがもう残りわずだ。
ああーーー!陽葵選手、敗れたー!」
「優太、うるさい」
「茜、昔から強いけど、もっと強くなってねえ?」
「えー?だってゲーム自体、すごい久々だよ」
「まあ、元々の才能ってヤツじゃね」
優太がニヤニヤして、(最高にムカつく)言った。
「じゃあお前が茜とやってみろよ」
「へ!?俺!?」
「ほら早く」
30秒後。
「だあああああっ!
負けたっ!」
「弱っ。
優太弱っ。秒殺じゃん」
さすがに私も呆れてしまった。
こんなに弱かったっけ?
「そいえば今日の祭り、どうすんの?」
陽葵がふと思い付いたように言った。
「俺らは二人で行くけど、茜は?」
「えっ、二人で行くの?ずるいっ」
「だからお前も誘ってんだろ」
「…でもソフト部の人たちと行く約束しちゃったし…」
「それなら後から合流するか」
「そうだな。花火始まる前にお前、こっち来れば」
「う~ん、途中で抜けるのって感じ悪くならないかなあ」
「じゃあ俺らがそっち迎えに行くわ」
「それは…それで…」
「なんだよ?」
ソフト部の中に陽葵や優太のことが好きな人は結構いる。
だから迎えに来られるのは面倒な誤解を生むかもしれないし…。
「浴衣は?」
優太が少し恥ずかしそうに私に訊いた。
「浴衣はみんなが私服だから着ないよ」
「えっ」
「マジかよ…」
二人ともガッカリしたような態度をした。
「何よ。文句ある?」
「今年も七五三みたいなのが見られないなんて残念だなあ、と思いまして」
「ねえ、それどういう意味?」
私は笑顔で二人のほっぺを両手でつねった。
「いひゃい(痛い)」
「ひゃなして(離して)」
「しょーがないでしょ。
一人だけ浴衣で行くわけにもいかないの。それに七五三とか言われるのに着てくわけないでしょ」
「むう…」
私は手を離した。
「私だって浴衣着たい」
「…じゃあもう友達の方断っちまえよ。
あ、お前ケータイないからメールも電話もLINEもできないんだっけ」
「なら、俺から言っとくぞ。
森下ってソフト部だろ」
言いながら、陽葵はスマホをぽっけから取り出した。
「え、森下って優花のこと?」
「ああ。そうだ。
おっ、森下相変わらず返信はえーな」
「なんてきた?」
「『茜と倉元と3人で行くの~?
がんばれよ(゜∇^d)!!』」
「何よ、がんばれよって…」
「まあ、そういうことだよなあ」
「そうだなあ」
陽葵と優太は顔を見合わせてうなずいた。
なんか私だけ仲間外れにされてる気分だ。
「祭りって何時からだっけ?」
「確か…七時からだよ」
「なら、六時半に迎えにくるから」
「…浴衣、着てってもいいんだよね?」
恐る恐る訊いてみた。
そんなのめんどくさいからやめとけって言われるかな…。
「いいぞ」
「えっ、いいの!?」
「いいけど、時間に遅れるなよ」
「やった!もう三時だからお母さん帰って来るまでに髪の毛だけセットしなくっちゃ!
じゃあ用意するから、バイバーイ」
「ひでえな…」
「追い出された気分…」
「ぶつぶつ言ってないで、ほら!」
私は二人を家から出して、早急に準備を始めた。
髪をとかしているときに、ふと思った。
あれ?私、普通に陽葵と喋ってた…。
すんなり仲直りできたや…。
良かった…。

