先生に言われて気付いた、自分がどれだけ子どもだったということ。
私、フラれたんだ。
そう思うと涙が出てきて止まらない。
先生は私のことが好きだったと思ってた。
なのに、こんなにもあっけなく、失恋するなんて。
屋上に来て、一人で泣いた。
右手は曲げると痛いから、全部左手で涙を拭う。
屋上からは、外部活の人達が練習しているのが見えた。ソフト部が見えて余計泣けた。
けがしてなかったら。私は落合先生と教室で出会わなかった
「ああ…。
もお、やだ…」
後悔した。
あの日、落合先生を待って宿題なんかやっていなければ。
そのまま下校していれば。
けがをしなかったら。
先生には、出会わなかったはずなのに。
誰も入って来ないはずの屋上の、ドアが開いた。
「ゆ、優太…」
「なにしてんだよ、こんなとこで。
あぶねーだろうが。屋上に一人なんて」
「優太っ」
私は耐えきれなくなって、優太の胸に飛び込んだ。
すると優太は、何も言わずに頭を撫でてくれた。
「私、フラれたの。
それで、悲しくて、…辛くて。
うう~」
「大丈夫だから。
俺がいるから、大丈夫」
いつかの日のことを思い出した。
肝試しに行った日、こうやって安心させてくれたのは優太だった。
私の初恋は、優太だった。
優しくて、カッコいい優太が好きだった。
「……今の茜の弱さにつけこむ訳じゃないけど、俺、お前が好きだよ」
「え、?」
「小さい時より、随分弱くなったな。
ずっとずっと強気なお前だったのに」
優太が私を、好き?
嘘だ。信じられない。
「嘘だって顔してんな。
ホントだよ。嘘じゃない。
俺は、お前が、好き」
「……………」
「昔から、ずっとずっと今も、大好き」
優太は笑って言った。
陽太も、優太も変わった。
前より、大人になって男っぽくなった。
体つきも、心も。
時間差で私の頬が赤くなっていく。
単純に嬉しかったのだと思う。
陽太に言われた時とは違って、感動していた。
「お前が失恋したのって、落合先生?」
「なんで知ってるの」
誰にも言ったこと無いのに。
「お前見てれば分かるよ。
ずっと見てたから」
私は知らない間に優太を、傷つけていたのかもしれない。
そうやって考えると、今度は申し訳なくて。
私も、優太のことが好きだったのに、勝手に諦めて先生に逃げた。
「ご、ごめん。
私…」
「俺はお前が落合先生のことを好きなことで傷ついてないよ。
でもお前がそうやって泣いてる方が、傷つく」
優しい。
どこまでいっても、優太は優しい。
だから好きだったんだ。