先生と関係を持ち始めたのは、7月の最初の夏に入る前だった。

落合先生が、私の気持ちを受け入れてくれるなんて思ってなんかなかった。

あの日から私は、週に一回くらい学校に残り、宿題をやるふりをして落合先生と触れあった。

触れあったといっても、キスまでだ。


当たり前だけど、落合先生はそれ以上なにもしてこない。

私たちの間には暗黙のルールがある。

それは、会いたいと言わないこと。

学校内で何度もお互いに、会うけど何も言わないこと。

他の生徒、他の先生と同じ対応をすること。
そして、誰にも言わないこと。

これこそ当たり前なことだけど、私の友達にも言ってはいけないこと。


こんなに縛られた恋なんて、これが初めての男の人との交際なんてって思う。

だけど、逆に言えばこんなにスリルのある恋は他にない。


「菊崎は、前に言ってた告白された人とはどうするの?」

ある日、落合先生に訊かれた。

この日は3度目だった。

「それは…。
元々友達だったために悩んでましたけど、でももう落合先生とこうなったので断るつもりです」

「そうか」

落合先生は軽く唇を合わした。

そして言った。

「でもな、菊崎。
お前はまだ14歳なんだ。

だからそれなりの恋愛をすべきなのに、俺がいるから周りと同じような日々は送れない。

だから、お前が大人になったとき後悔するんじゃないかと思うんだ。

そしてこんな関係は長くは持たない。
お前を傷つけるだけになるかもしれないんだ。

それでもいいのか?」

少し、ショックだった。

なんでそんなこと言うの?

そんなこと言わないで、私のことだけを見てよ。


そう言いたくなったが、先生の前でこれ以上子どもになりたくなかったから我慢した。

「…そうですね。
確かに後悔するかも。あのときそうしていればって。
だけど、私は将来後悔することを考えてまで恋をしたくありません。
そんなことで今好きな人を諦めたくないですし」

「…………そうか」

先生は困ったように笑った。