私の肘は、骨が少し割れていると診断されて、もう投げるようなスポーツをするのは難しいと言われた。

でもなぜだか泣けなくて。
多分、水分がもう残っていなかったんだろう。

私はもう部活を引退しようかと思って放課後、職員室に伊藤先生を訪ねた。

「そうか…。
医者にそう言われたら俺は何も言えないが。
でもお前がけがをしたのは俺のせいでもあるからな」

「いえ、それは違います。
私の技術の問題です。先生のせいじゃないです」

「これはただの俺の自己満足になってしまうかもしれんが、お前にはまだソフト部で活動してもらいたい」

「え、でも肘が…」

「分かってる。
だからマネージャーをやってもらいたいんだ」

「マネージャー?」

確かこの学校ではマネージャーはなかったはずだ。

「校長先生にも相談はするが、やっぱり一度選手を経験したお前ならチームメートの気持ちがわかりやすいだろうから」

「わかりました。
でも考えさせてください」

「ああ。マネージャーするのも一応けがが治ってからだから、それまでには決めておいてくれよ」

「はい、わかりました。
失礼します」

そして職員室をあとにした私は自分の教室に、荷物を取りに向かった。

マネージャーか…。

そんな役割で活かしてくれるのか。

正直、あまり気が進まない。

私がやりたいのはいつだって実際にやる側だし、チームメート達をサポートできる自信もない。

しかも先輩達にあんなこと言われた後じゃ、部活にさえ行きたくない。

ソフト部では、けがをした人は、軽いけがじゃないかぎり練習には来なくていいことになっている。

私の場合、肘が曲げられなくて荷物も持てない状態なので治るまでは授業が終わった後そのまま帰ることになる。

でも早く帰っても暇なので教室で宿題をやって帰ることにした。