「茜(あかね)!」

下校の途中、誰かが私を後ろから呼んだ。
でも声を聞けばすぐわかる。

「なんだ、優太(ゆうた)か」

「なんだってなんだよ」

優太は幼なじみで保育園の時から中学二年生の今までずっと一緒だ。

「一緒に帰ろうぜ」

私はいつもその誘いを断れず、

「はいはい、いいよ」

と答える。


それから私と優太は今日学校であったこと、おもしろかったことなどを報告し合った。

「それにしても、最近陽葵(ひなた)と会ってねえな。茜最近あいつに会った?」

陽葵とは私のもう一人の幼なじみである。

優太とも幼なじみの関係にある。

「ううん、学校では見たりするけど喋るのは滅多にない」

「そうか…」

「…だってあいつ、彼女いるからそっちで忙しいんじゃないかな」

「そうか…」

優太は陽葵のこととなるとそれ以外何も考えられなくなってしまう。

陽葵病なのだ。
このことで女子によく同じ質問をされたものだ。

「ま、私達は今彼氏も彼女もいない寂しい人たちだからね~」

「ははっ。そうだな、俺たち寂しいやつらだな」

「いいさ、私は夏までに彼氏作るもん」

「夏までにって。もう5月だぞ。あと2ヶ月もねえのにどうやって作るんだよ」

「そ、それは…。頑張るしかないな…」

「お前にはちょっとキツイんじゃないか?一生かかっても少しキツイと思うぞ」

「ねえ、それどういう意味?」

気づくとそこはいつも優太と別れる所だったので私はもう手を振って別れようとした。

でも優太に呼び止められた。

「なに?」

「…お、お前、さ、」

「ん?」

「2年になって、その、好きな人、できた?」

「…ううん。特にいないよ」

「…そうか。それだけ聞きたかった。また明日な」

「うん、バイバイ」

少し優太がいつもと違った気がしたが、私は気にとめなった。