「やめてよ!!!お父さん!!!」



お父さんは、あたしが中学生になると
毎日、お母さんに暴力を振るうようになる。



「お前が悪いんだろ!!!」



「ごめんなさい!ごめんなさい!」



「お母さんは何も悪くない!!!」



お母さんはただ、お父さんに謝るだけだった。
お母さんが殴られる理由は、3人目を流産したことだった。



「今度こそ俺の思い通りに育ててやろうと思ったのに、お前が弱いから……!!!」



ドカッ



「あ゙あ゙っ」



美人のお母さんに似て、あたしは恵まれた体型や顔で産まれてきた。2つ下の弟も、お母さんに似て、スラッとしている。



「どうして誰も俺に似てないんだ!!!」



お父さんは、自分似の子供が産まれなかったからDVをしている。
待望の3人目は、流産で死んでしまった。



「クソがぁぁああああああ!!!」



上から振り下ろされた拳から、華奢なお母さんがあたしたち姉弟を守ってくれた。



「もう、この子たちには暴力をふらないで…!お願い!この子たちは何も悪くない!」



泣きながら訴えるお母さん。
でも、お父さんは何も反応しない。



「うるさいんだよ!!!」



最終的には、あたしたちにも暴力して、
暴れるだけ暴れて家を出ていく。



「もう…いやだよ」



弟が発した言葉に、気持ちが揺らぐ。
お母さんが耐えているんだから、あたしも耐えなきゃ。その正義感が崩れ落ちる。



「愛生が高校生になったら抜け出そうね」



この日から始まった、2年後の逃亡計画。



「それまで…我慢してね」



「お母さん…」



それからお母さんは、引越し代を稼ぐために毎日毎日働いてくれた。
あたしたち姉弟は、なるべく生活費などを抑えるために節約をした。



「じゃあ……愛生、転校するの?」



親友の唯に引越しのことを言うと、
涙目になって俯いた。



「うん、ごめんね。ほんとに…」



「ううん、あのこと知ってるのはあたしだけだもんね。よく耐えたね…愛生」



とうとう、中学を卒業する日が来たんだ。