難関高校の知命道に入学して、早1年。
高2になった俺は、少し浮かれてた。



「神真、なにしてんの?帰るぞ」



外を見ていた俺に、声をかけてきたのは
幼なじみの、須田理遠(すだ りおん)。
名前だけだと、女と間違えられる。



「おー、帰るか」



「智里、先に玄関行っちゃったよ」



「はあー?アイツ、どんだけ早く帰りてーの」



智里とは、中学からの知り合い。
田部智里(たべ ちさと)。
童顔で、少し背も低い、声も高い。



「走らねーとアイツ叫ぶぞ」



「しゃー!ひとっ走りすっか」



俺と理遠は、気合いを入れて教室を出た。
そして、80mくらいある長い廊下を猛ダッシュ。



「理遠!コケんじゃねーぞ」



「余計なお世話!」



一瞬、後ろを向いていた。
その瞬間、何かとぶつかって俺は下敷きになる。




「神真!前みて!前!!!」




ドンっ



「いたたたた…」




「悪ぃ、大丈夫か!?」



俺の上に居たのは、なんとなんと。
ちょーーー地味っ子だった。
腰まであるロングヘア、膝下のスカート、黒縁メガネ。はい、地味。




「すすす、すいません!重くて申し訳ないです…」




あ、気にするのそっちなんだな。
やっぱ、そこは女子だ。




「そんなの気にすんなって、軽いから。つか、軽すぎて乗ってるのかわからねーくらいだよ」



そう言って、俺は固まってる彼女の肩を抱えて、一緒に起き上がる。




「ぶつかってしまってすいませんでした!」




勢い良く頭を下げる彼女。




「気にすんなって、俺こそごめんな」




頭を下げてる彼女の頭をなでる。




「っ!?」




すると、驚いたのか、またまた勢い良く頭を上げる。




「あ…わり、いつものクセで…」




俺には弟と妹がいる。
だから、ついクセで頭をなでちゃう。




「あ、そうだったね!」




「え・・・?」




俺はこの子と初めて話したよな?
だよな?え?
じゃあ、なんで兄妹いるの知ってんだろ・・・。





「あ、あたし行きます!ごめんなさい!」




そして、長いスカートをなびかせて廊下を走り去った彼女。





「あー、名前聞き忘れた」





「まーたそーやって、ナンパすんのか?」





後ろからニヤニヤしながら話しかけてきた理遠。





「そんなキモい顔すんな、イケメンが台無し」






「なにそれ、嫌味?」






「ちげーよ!!!」






あーあ、本気で名前聞いときゃよかったな。