恋の練習屋

「…………マジで?」


私は青ざめて、宮原陸を見上げる。


勘弁だから。マジで。


「ジェットコースターに乗らないで遊園地なんて、馬鹿げた話があるか」


「いやいやいや!あるでしょ!」


今、宮原陸が乗ろうと並んでいる列の着く先はこの遊園地の目玉。ジェットコースター。


いやぁ、ほんと、私、絶叫系苦手なんだって。


「いや、ほんとに勘弁して」


「問答無用。何事も挑戦しなければ語れない」


宮原陸はそう言って、強引に私の手をとってジェットコースターに乗り込む。


「いや……うそでしょ?え……マジ?…………………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


私の制止も聞かずに動き始めたジェットコースター。


私は恐怖を分散させるために、ただひたすらに絶叫した。







「ほんと、マジで……あり得ないから」


人気の少ないエリアのベンチに座ると、がっくりと項垂れた。


気持ち悪い。三半規管がおかしな感じにダンスしてる。


「おめでとう。これであんたはジェットコースターを克服した」


「してないわよ!!」


この男、何を根拠に克服したなんてのたまってやがるんだろう。


「あんたは……随分と楽しそうだったわね」


皮肉をこめて、思いっきり睨んでやるけど、宮原陸はそれすらも笑顔で受け止めやがる。


「ジェットコースターは好きだから」


その笑顔は、少しだけ諒に似ていて。


確か私は、諒のその言葉を真顔で理解出来ないと一蹴したんだっけ。


あの時の、諒の悲しげな顔が脳裏によぎり、こんな風になってでも一緒に乗ってあげれば良かったのかな、そしたら……なんて思ってしまう。


「あの時……乗ってあげれば良かったのかな……」


知らず知らずのうちに声に出してしまっていた。


「いだっ!?」


なぜか、宮原陸に頭をポカリと殴られる。


え、なんで!?暴力反対よ!?


文句の一つでも言ってやろうと宮原陸を睨んだ。


「俺は反省しろと言ったが、後悔をしろとは言ってない。反省と後悔は全然違う。もし、お前の脳みそが反省と後悔をイコールで結んでいるのなら、今すぐ大学の屋上から落ちて一ヶ月ほど意識を失えばいい。少しはマシな思考回路になるはずだ」


突然の毒舌にあんぐりと口を開けている私に、宮原陸は冷たい目をしてまだ続ける。


「反省は次への一歩をつくり、後悔は人間を後ろ向きにするだけだ。今、あんたがやるべきことは……いくらあんたの馬鹿な脳みそでも分かるだろ?」


ムカツク。私を分かったように言っちゃって、何なわけ?って怒りたいのに、最後に優しげな表情で微笑まれると、言えなくなってしまう。