恋の練習屋

全ての講義が終わり、私はあの紙に書いてあった教室のドアの前にいる。


あの後、メイクはやり直した。髪型も、整えて。服はもうどうしようもないからこれでいい。


覚悟を決めて、一つ深呼吸すると、恐る恐るドアを開けた。


「あ……あの〜……」


ひょこっと顔だけ入って教室を見渡すと、ど真ん中に宮原陸がふんぞり返って座っていた。


今……なんか、イラッてきた。すごい、イラッときた。何様のつもりなの、コイツ。


「ようこそ、仲野美咲」


口角をあげて、自信げに笑ったその顔は逸品級。それがまた、ムカツク。


「恋の練習って、何するの?」


頬の筋肉が引き攣るのを自覚しながら、宮原陸に近づき、上目遣いで訊く。


「…………………………」


そんな私に、宮原陸は顔を赤らめる訳でもなく、何か言う訳でもなく、ただ、無表情で私を見つめた。


…………え?なに、何なの?なんで無反応なわけ!?


男なら、顔を紅くするなり、嫌悪感丸出しにするなり、何らかの反応を示しなさいよ!?やっているこっちが馬鹿みたいじゃない!!


宮原陸の無反応さに心が折れそうになってきた頃、宮原陸が盛大なため息をついた。


「……言っておくけど、俺はあんたの恋愛に興味があるだけであって、あんた自身には興味なんて微塵もないから」


落とそうとしても、無駄だから。


輝かんばかりの笑顔でそう言われ、思わず呆気にとられた。


「お……落とそう、だなんて……」


「思ってたでしょ?」


「…………」


宮原陸に図星をつかれ、私は黙るしかなかった。


「まぁ、続けるけど。仲野美咲。付き合った男の数は30人。どの男も約半年以内に破局。破局パターンは一種類。男の浮気を目撃後、『想像と違う』という理由で別れを切りだされる」


見事に読み上げられた私の恋愛歴。その正確さにあんぐりと口を開けてしまう。


「な……なんでそんな、知って……!?」


「俺の情報網舐めないでよね」


「……やっぱり、私のこと、興味あるんじゃ……」


「ない。元素の大きさほどない」


「ミクロ以下じゃない」