恋の練習屋

あのデート(?)から2週間が経った。


あれから何回か宮原陸に会ったけれど、目が合わせられない。


まともに笑えない。顔が熱くなる。心臓がうるさい。


これが意味することは知っている。中学生じゃあるまいし。


でも、私は『これ』に名前は付けていない。付けたら、もう止まれないから。


別に、何か目に見えた障害がある訳じゃない。


難点は『大学一の変人』というだけだ。


だけど、私は『これ』を素直に認められていない。


怖いんだ。


今までの恋愛と同じように、短期間に裏切られて終わるのが。


それは、きっと本気だから。


はぁ、と溜息をつく。


逢いたくない。でも、逢いたい。


こんな感情は初めてだ。対処の仕方がよく分からない。


「なぁーに、溜息ついてんの?幸せ逃げるよ」


知奈が私を指さしてにんまり笑う。


「指で人のこと指さない」


苦笑いで、知奈にチョップをお見舞いすれば、知奈は一層おどけて、言った。


「ほら、こんなに天気も良いんだし!ランチを楽しもうよ、悩める若者よ」


「悩める若者よって……あんたも若者でしょーが」


「バレたか!」


知奈がテヘペロと舌を出した時だった。


「キャァーーー!?」


女性の甲高い声が聞こえてきた。


驚いて反射的にその声のした方をみると、数100 m程先に一組のカップルの彼氏に殴りかかっている男がいた。


あー……修羅場ね。御苦労なこった。公共の場で何してんだか。


修羅場と認めると、とたんに興味をなくし、知奈の方に向き直す。


でも、知奈は修羅場を見たまま動かない。


「……知奈?」


「あれ……宮原陸じゃん」


知奈の口からでた名前に私は一瞬背筋に嫌な汗が流れた。


知奈は両目2.0と目が良い。目だけは良い。


知奈が、見間違うはずなどない。


さっきの男は宮原陸なんだと確信した刹那、私の身体は無意識に立ち上がって、宮原陸のもとに走っていた。


「ちょっ……美咲ぃ!?」


「知奈、ごめん!」


知奈の制止の声も聞かず、今はただ、宮原陸の近くに行きたかった。