恋の練習屋

力なく渇いた哂い声を洩らす。


どうやら私の心は宮原陸にどうしても私を否定してほしいらしい。


本当はそんなこと、望んでいないのに。


「もともとは、恋の練習屋なんてダサいことをやることになったきっかけはあんただ」


答えになってないわよ。ていうか、ダサい自覚はあったのね。…………て、え?きっかけが、私?


余りにも予想外すぎた答えに、涙はいつの間にか溢れることを忘れ、目を見開いた。


「入学して間もない日、あんたが彼氏と別れる場面に出くわした。ぱっと見は全く興味なかったが、あんたの表情に興味がわいた」


宮原陸は、至って真剣な表情で私の顔を両手でふわりと包み込む。


「『無表情』だったんだよ、あんた。普通は泣いたり、傷ついたりなんらかの感情が表れるはずなんだ。なのに、あんたは無表情。な?興味湧くだろ」


「いや、湧かないでしょ」


な?なんて同意を求められても、困る。他人の無表情に興味湧く奴なんて、いないに等しいだろう。


「俺は湧いた。んで、恋愛関係の何かをやってれば、風の噂ででもあんたに伝わって、俺んとこ来るかな、と思って恋の練習屋始めた」


ほんとはもう少し胸キュンしたりする話なんだろうけれど、宮原陸の残念すぎる方向転換に目眩がした。


流石大学一の変人……としか言いようがない。


「そこはさ……私を探すなり出来たでしょ?そんな面倒なことするより、あんたの情報網ならいとも簡単にわかったでしょうに……」


「その手もあったな。だが、そこそこに面白かった。他人の恋愛も。一人一人似ているようで違う選択や結果になって」


それに、と付け足して、宮原陸は微笑った。


「あんたは来た」


くしゃりと無邪気に微笑った笑顔はやっぱり無垢で、それでもどこが艶やかで。少年のようなのに、大人っぽさも残している。


その笑顔にさせているのは自分なんだと自惚れると、心の奥がキュンと淡い音をたてた。