「ぶっちゃけ、はーちゃん成瀬のことどう思ってんの?」

「……えっ?」




勉強の最中、突然ひまりがそんな質問をしてきたので葉月は持っていたボールペンを落としそうになった。動揺する葉月をよそにひまりの視線は変わらずノートと教科書にある。

けれどあやねと良介はそうもいかなかったようで二人して勢いよく顔を上げて葉月をジッと見つめてきた。その目はどこか輝いてるようにも見える。



「ど、どうもなにも…いい子だなぁとは思うよ?最初は怖いなぁって思ってたけど話せば普通にいい子だね!」

「えっ、なにそれだけ?」

「ん?」




あまりにも面白くない答えだったのか、ついにひまりもパッと顔を上げて葉月を見る。




「いや、なんかこうもっとないの?だって結構仲良さそうじゃん。かっこいいなぁ、ドキドキするなぁ好きだなぁとか、そーゆうさぁ。あ、好きってもちろん、ラブの方ね」

「え、え!?す、す、すすすす好きぃ!?」

「うおっ、はーちゃんめちゃくちゃどもった!おもしろっ」

「す、す、すすすす好きぃ!?だって!」

「塚本、彩音うるさい」

『スンマセン』




大袈裟なほどに動揺する葉月を見てゲラゲラ笑う二人をひまりが小さく睨めば、その肩が瞬時に小さくなる。
この3人の中じゃひまりが主力なのだろうか、なんてそんなことを思ったり。
それにしたって、とんでもない言葉が飛んできたものだ。自分が優聖を好きだなんて。




「な、ないない!確かにそりゃあ成瀬君すっごいかっこいいから、間近で見られたら緊張しちゃうけど…だからって好きとかそんなことは…」

「ふ~ん、そっかぁ。なんだー。もし好きなら私達、協力したのに」

「いいねぇ、それ!大人と高校生の切ない恋…みたいなの?あたしそんな感じの少女漫画この前読んだわ!」



はーちゃん貸そうか?と言う彩音に葉月は葉月は苦笑いしながらやんわりと断った。




「まぁでも日高さんからしたら俺らなんて、ぺーぺーのクソガキだろ?そんなガキなんて恋愛対象に入らないっしょ」

「えっー!わっかんないじゃんそんなの!つか4つしか変わらないじゃん!」

「変わる変わる。日高さんは成人済み、俺ら未成年。この差はでかいだろー」

「そこが燃えるんじゃん」

「お前はなんの話してんだよ!」



変な口論を始めようとする良介と彩音。
そんな二人に葉月は「まぁまぁ」となだめる。確かにその通りだ。成人済みの自分。未成年の高校1年生。違いは大きい。

優聖はかっこいい。それはそれはとても。至近距離に来られればドキドキだってする。そんなの誰だってそうだろう。かっこいい男の子に近づかれたらそうなるのも当然。ましてや自分は異性と付き合ったことすらないのだから。




「でもアイツ、中学ん時ほんっと女子に人気あったならなー。ムカツクくらいに!」

「え、そうなんだ!そっかぁ塚本君、同じ中学なんだっけ」

「そうっす!もうほんと、月に3回くらい告られてましまからねー」

「す、すご…」



あの容姿だ。そりゃモテるに決まってるはず。
それにしたって月に3回はなかなかだ。




「ちっ、あたしだってそんくらい告られてみてーわ!」

「お前はその口の悪さをどうにすればいいんじゃね?」

「あら、じゃあそうしてみようかしらんっ」

「うっわ、きっっも!!」

「ごめん彩音、鳥肌立った」

「お前らぶん殴るぞ」



そんな3人のやり取りは、やはり面白い。