純情女子と不良DK




「え、勉強会?」

「うん」



 その夜、花に誘われお決まりの居酒屋で二人で飲んでいた。
優聖とその友人達に、優聖の家にて勉強を教えに行ったことを話せば、目を丸くして驚いていた。
花からしたら、まさかそこまでの仲になってるとは思っていなかった様子。まぁ確かに、葉月自身もまさか自分がああして高校生と絡み勉強まで見てあげるだなんて想像すら出来なかった。
 ハイボールの入ったジョッキに口をつけて喉に流し込みながら小さく苦笑いが零れる。
でも本当、困ってるみたいだったしそんな子を見てみぬふりできるほど器用じゃないのだ。



「なんか知らないところで面白いことしてんねぇ~…。まぁでも葉月結構アレだからね」

「…アレ?」

「お人よし」

「あー、はは…」


 否定は出来ない。
実際、会って間もない優聖に対しても口うるさいような事を言ってしまったし。
でもあれは正しいことを言ったと思う。高校生があんな時間まで出歩いてたら親だって心配するだろうし、何か事件に巻き込まれたりとかしたら大変だし……ああ、ほんとに自分はお人よしだ。



「なに?向こうから誘ってきたの?勉強見てくれーって」

「当たり前じゃんっ。私から、勉強見ようか?なんて言えないよ無理無理」

「ましてや相手は異性だもんねぇ~」

「なんでニヤニヤするの」


 口もとをおさえてニンマリする花を小さく睨む。
どうせ彼氏いない歴=年齢ですよ、と拗ねたように言えば笑いながら「ごめんごめん」と謝って来た。

 彼氏いない歴=年齢。
悲しいことに事実なのだ。そういう事に興味がないとか、そんなんじゃない。むしろ興味はあるし普通に恋をしたいとも思ってる。彼氏のいる周りの女の子達を見ては、いつか自分も…なんて淡い期待と夢を抱いた。が、結局学生で恋愛なんて全く出来なかったのだけれど。

 好きな人どころかあんまりクラスや学年で男の子と話すことは無かったし。話すと変に緊張して挙動不審になっちゃうし。何度か話して慣れてしまえばどうってことないのだけれど。



「でもそっかぁ~若い男の子、それもぴちぴちの高校生男女と葉月が仲良くしてるのは意外だけど、葉月の顔見たら楽しそうな感じだしいいんじゃない?」

「うん!最初はどうしようって思ったけど、楽しかったよ」

「そうかそうかぁ。そして成瀬君とかいうイケメンもいてねぇ」



 相変わらずニヤニヤとした表情のままの花に完全に葉月と優聖との関係に期待を抱いていた。彼氏がいたことない葉月に、まだ見ぬイケメン高校生の優聖が彼氏になっちゃったりしたら面白いのに、なんてそんなことを考えていた。


「ほんとかっこいいよ。私未だに直視できないもん」

「もうめっちゃ見たい!今度写真撮ってきてね!!」

「ええ~…。あ、でも明後日また勉強するからその時に…撮れ…いや無理!」


 写真撮らせて?なんて聞けない。絶対変な風に思われるだろうし、じゃあ一緒に写ろう?なんて大胆な行動も出来やしない。
盗撮をする勇気もスキルもないし、花の願いは多分聞けないだろう。そういうチャンスが巡ってくればいいのだが。