ああ、そのことでわざわざ謝罪の電話を。
律儀な子だなぁと思いながら葉月はぶんぶんと首を横に振る。
「そんなそんな!全然大丈夫だよ…!気にしなくていいのに。それに結構楽しかったし!みんないい子だね」
『それならいいんですど…つかあんなのほんとただのやかましい奴らなだけですから』
無駄にテンションたけーし、とため息混じりに言う優聖に小さく笑った。うざそうにしてたけれど、それでも仲の良さが十分に伝わってきた。
『帰りとか迷惑かけませんでした?』
「全然!むしろ盛り上がったよ。なんと連絡先も交換しちゃいました」
『えーなんかめっちゃ仲良くなってる』
めっちゃ仲良くなってるかどうか分からないが、普通に仲良くなれたかなとは思う。
何より、彼女達が気さくにどんどん話題をふって話しかけてくれるから葉月としてはそれがありがたくもあり助かっていた。
初対面の人とはなかなかこう、スムーズに話題をふれないので彼女達のコミュニケーション力が羨まし感じるくらいだ。
見た目こそ自分なら近寄りがたい部類の子達だが、中身は全然そんなことない。とてもいい子達だ。
これで実際、すごく不愛想で感じ悪かったらきっとすぐに帰っていたかもしれない。
……帰る勇気なんてあったかどうかも分からないけど。
優聖も「まぁ日高さんが平気だったならいいんですけど」と言ってくれた。
「わざわざそのために電話してくれたんだね?なんかありがとう」
『あー…いや、それもそうなんですけど』
「ん?」
『また別の日、勉強見てほしいっていう電話でもあるっつーか』
「ああ!」
なるほど!そうだよね、テスト一週間前って言ってたし。さすがに今日一日じゃ例え詰め詰めでやっても限度があったし。補習を免れたい優聖達にとってはさすがにもう少しやっておきたいってところなのだろう。
「そうだね。今日だけじゃさすがにあれだもんね!そうしたら、彩音ちゃん達にもまた連絡していつにするか、」
『や、俺と日高さんだけでいいっす』
「……え?」
『俺と日高さんだけでいいっす』
葉月は笑顔のまま一時停止した。
えーと、つまり二人がいいって事だろうか。てっきり彩音達も一緒に、と思ったのだけれど。
「な、なぜ…?」
『アイツらいるとまともに出来ないんで、1対1のが集中出来ると思うし』
……まぁ、確かに勉強の途中で何度か脱線したからそれはご最もかもしれない。一応彼女達もその後しっかりやってくれたけど。何度も「疲れたー飽きたー」を連呼していたのは忘れよう。それでも普段そんなに勉強しないと言っていた彼女達にしては頑張った方なんだと思う。
うん、そっか。1対1がいいのか。
『ってわけで明後日、俺学校終わったら電話するんで』
「え!明後日!?」
『何か用事あります?』
「いや…ない…ですけど」
『んじゃあ決まりー』
もう断る隙さえ無い。
とんとん拍子に進んでいく話しに頷いていくしかない葉月。仕方がない。後輩にあたる子、こうも必死?に勉強を教えてほしいと自分に頼ってくるのだ。先輩としてしっかりその役目を果たさなくてどうする。
変に挙動不審になってしまうのは、自分が男の人に対しての免疫が無いからで。
でも優聖は男の人、というか男の子…の方がしっくりくるし。
二人きりを意識してどうする。相手はただの高校生。そして可愛い後輩。……ん?可愛い…はなんか違和感か。
とにかく相手が異性だからって妙にドギマギするのはやめろ葉月。
と、自分に言い聞かせた。
そのまま、この話は確定になり明後日の夕方―優聖が学校が終わった放課後に勉強することになった。
