「やー、でも驚いたなぁー!まさかアイツが日高さんに声かけてたなんて。俺とアイツで見てましたよ!日高さんが盛大にこけてるところ!」
……物凄く恥ずかしい所見られていたらしい。
良介は改めて葉月と優聖の関係に驚きの言葉を口にしていた。自分もまさかあの時ドッグランドでポン太を散歩させてるところを二人に見られていたなんて知らなかったから、聞いた時は本当にびっくりした。
あれめっちゃ面白かったーと笑う良介に余計に恥ずかしくなる。
「しかもはーちゃん年上に見えないしね!」
「それほんとに言ってる…?」
「マジマジ!普通にタメだと思ったもん。ね、ひまり」
「うん。だから普通にタメで話しちゃったけど…直した方がいい?」
「なんか喜んでいいのか、悪いのか分んないな…。いや、いいよ今更!私気にしないし!」
今から敬語に直されてもそれはそれで何だか変な感じがするし。そう言えば二人は嬉しそうに笑った。
「え、じゃあ俺もタメで、」
「お前はダメ!」
「なんで!?」
「なんでも」
えー、と文句を零す良介に「ダメなもんはダメ」と彩音。タメで話していいのはあたし達だけだとなんだかよく分からないルールを決めていた。
「はーちゃん、家はこの辺?」
「うん、ここから15分くらいかな」
「へぇ、ほんとに近いんだね。私はもうちょっとかかるかな。2丁目の方だから」
「ひまりちゃんも扇町なんだ!」
葉月と優聖は扇町1丁目。そしてひまりも、ここ扇町の2丁目らしい。
意外と近場な人がこうもいると何だか少し嬉しい。
「彩音と塚本は電車だけどね」
「つっても一駅だけどな!」
「電車で30分のあたしに謝って~」
どうやら他二人は電車通いだそうで、彩音が30分とかきついと愚痴を零しだす。
朝の満員電車とかは本当にきつそうで、電車通学だった花はいつも疲れ切った表情で朝学校に来ていたっけ。
それを聞くと、高校が近場で良かったとしみじみ思う。
「てかほんっとにはーちゃんと成瀬って付き合ってないの?」
「え?」
「いやでも俺いいと思う!日高さんと優聖!」
「何を仰る!?」
またその話か…!
葉月は慌てて首を横に振った。何度も言うけど違う、と。
それでも尚、怪しげに目を細めてくる彩音。付き合ってるように見えてしまうようなこと…してるつもりないんだけどな、と葉月はこれまでの優聖との会話や行動などを思い返してみる。
……うん、これっぽっちも無い。
「最近知り合ったとは思えない仲の良さじゃーん!」
「例え付き合ってなかったとして、きっと近い未来…」
「ひまりちゃんヘルプ…」
「二人とも、はーちゃんが困っておられる。やめたまえ」
「誰だよ」
葉月を庇うように前へ出て真顔で言うひまりに、彩音が間髪入れずに突っ込んだ。
「まぁ、成瀬を通してこうやってはーちゃんと知り合えたことだしなんだっていいじゃんか。付き合ってようがなかろうが」
「付き合ってません付き合ってません!」
何度も言う。決して優聖とは付き合ってはいない。
こればかりは勘違いされてはいけない。そもそも自分のような超平凡スペックな女とルックス文句無しの彼とじゃどう考えても、どう見ても月とスッポンってやつじゃないか。
あまり誤解されては優聖に失礼だと思った。
必死に否定する葉月に、三人はやっぱりつまらなさそうな顔をした。
