純情女子と不良DK



 勉強会もお開きにして調度、成瀬家を出た葉月達。今は家の前でそれぞれ話しているところだ。
優聖の母が、せっかくだから夕飯くらいどうかと聞いてきたけれど優聖が断固拒否。うるさくなるから嫌だそう。
それはそれで楽しそうでいいけどなぁ、と思う葉月。まぁ私は場違いだけど、と後から心の中で付け足すように呟いた。でもみんな今日はちゃんと勉強できたみたいで満足もしてくれたようだし、結構楽しかったから今日ここに来たことは後悔していない。



「日高さん、家まで送りますよ」

「え、いいよ別にそこまでしなくても」

「いや送ります。今日のは俺が言いだしたことだし」



 律儀にも送ってくれるという優聖。
優聖の家から葉月の家までは遠くないし、本当に送ってくれなくても平気な距離だ。
葉月が悩んでいると、突然彩音がその腕を掴んで引っ張って来た。葉月は驚いてバランスを崩しそうになるが、何とか体勢を整える。
ぴったりと自分に密着する彩音に小首を傾げた。



「はーちゃんはあたし達と帰るからいいんです~!アンタ送るとか言って、ただ一緒に帰りたいだけでしょ~!」

「は?そうだけど、なに。ダメ?」

「えっ」



 一緒に帰りたい。彩音の冷かすような言葉に否定することはせずに素直に頷く優聖に彩音は「うっわ」と目を細める一方で葉月は思わず顔が赤くなりそうになった。ひまりや良介も何か期待するように目を輝かせ始めた。
しかし優聖の次に返答でその期待は裏切られる。



「日高さんとは愛犬家同盟だから。おすすめのペット用品店とかそれ関係で色々話したいんだよ」

「……くそつまんな!」

「おいくそって言うな!」

「期待して損した」

「も、もう帰ろうみんな!ね!」



 みんなは一体何を期待してるんだ!まぁ自分も自分でちょっと「あれ」なんて思って照れちゃったりしたけど、いやほんと恥ずかしい。
そんな気持ちを掻き消すように、大袈裟なほどに落胆している彼らに「帰ろう」と言った。
彩音やひまりの腕を引いて帰ろうと言うそんな葉月に優聖はどこか不服そう。



「成瀬君、またドッグランドで!」

「テスト明けになっちゃいますけど」

「テスト頑張れ!」



学生の本分は勉強です!と言って親指を立てればその眉間に皺が寄った。



「では、はーちゃんは私らが無事に送り届けてくるので」

「ひまりちゃん、私一応成人してるよ…」

「見えないから通用しないよ」

「酷い!」

「ま、っつーことで優聖!お疲れ!ちゃんと勉強しろよ!」

「お前もな!」



 お前が一番心配だと言う優聖。確かにこの中で一番やばそうなのは良介だった。
葉月もそれは彼らに勉強を見ているうちに分かってきたこと。みんなやればそこそこ出来る子なのだが、その中でも良介が心配だなと感じる。その次に彩音、優聖。

優聖は出来る科目と出来な科目にムラがありすぎて、またちょっと問題。反対に、全体的によくできてるのが、ひまりだった。
彼女は他3人と比べたら真面目な方で、勉強面もやればよく理解していくような子だった。これは葉月の短時間の分析である。



「また分んないことあったら力になるよ。…て言ってもテストまであとちょっとだけどね。頑張って!」

「メールします」

「え?ああ、うん!いつでも!それじゃあ、また」



 優聖に手を振り、葉月達は帰り道を歩き始めた。