純情女子と不良DK




「ちょっ!まじかっ。上司殴ったの!?」

「そんな事するようには見えない…勇者か…」

「やべー超面白っ」



引くどころか、何だか面白いネタでも見つけた様なそんな感じで目を輝かせる一同に、葉月は少し拍子抜けした。
まぁ葉月からしたら全く笑えないネタだ。



「えー!詳しく詳しく。なんで殴ったの!?」

「えっと、上司のやり方が気に食わなくて…」

「はーちゃん強すぎかよ」



意外と強めなんだー、とか大人しそうに見えてギャップだわぁと、意外そうに言う彼女達。
大人しいの見た目だけだよ、と心の中で呟いた。
そんな彼女達の言葉に、優聖が「いやいやいや」と自分の顔の前で手を振った。



「大人しいとか全然だよ、この人。だって俺の事カバンで殴ってきたからね」

「え、ちょっ」

「コイツを!?日高さんマジ?」

「そうそう。案外暴力的だからみんな気をつけてー」

「ちょっと!何言ってんの!?」




優聖の言葉にギョッとして、思わず優聖の胸ぐらを掴んだ葉月。当の本人は「キャーこわーい」と棒読みでそう口にしている。



「あれは君がいきなり驚かしてきたから正当防衛しただけだからね!!」

「と、まぁこんな方です」



胸ぐらを掴まれたまま、葉月を指差し良介達に顔を向ける優聖。
だーかーらー、と半ギレ状態の葉月にも優聖は「はいはいすいません」と軽く流していく。




「二人って本当仲いいね。本当に付き合ってないの?」



これは本当に素直に純粋に思ったこと。
不思議そうなひまりの言葉に葉月はピタリと動きを止めて、慌てて優聖と距離を置いた。
そのあまりの素早さに、「忍者か」と突っ込んだ。



「付き合ってませんからね…!!」

「わっ、顔赤い!純粋か!」

「やっぱ年上好きかぁ~優聖め」

「お前らねぇ…」



ここにいる子達は自分を年上だって認識を全くしていないのでは……と思うくらいにフランクすぎて何だか少し複雑な気持ちになる半面でどこか気楽になれた。
こういったからかいが無ければいいんだけど…。



「つーかいい加減勉強始めない?せっかく日高さんがわざわざ来てくれたんだしさ」

「あー…だね!ちょっと忘れてた!」

「まだ聞きたいこといっぱいあるんだけど、まぁそろそろ始めないとだねぇ」



 面倒だなんだと言いながら渋々鞄から教科書やノートと取り出し始めたひまり達にホッと胸を撫で下ろした。
なんだかもう教える前から既に疲れてる。けど、優聖と二人で勉強…よりも、彼女達も交えてくれていた方が良かったのかもしれないなと、少しありがたく思った。



「じゃあ、切り替えて勉強始めよう!みんなどの科目が分かんないの?」

「あたしとひまりは数学と古典でしょー。成瀬と塚本は?」

「あ、俺数学は平気だ」

「えー、俺全部ダメー!」



(お、おおう…統一してないな…)



思わず苦笑い。
さすがにこの一日で全ての科目を教えるのは無理だ。そもそもこの四人がどの程度の範囲で出来るのかも分からないし。全部分からないとか言っている良介が危険な感じはするが。



「ん~……じゃあ、とりあえず数学からやっていこうか。その次が古典ね。成瀬君、それまで一緒に数学見てあげてくれる?」

「まぁ数学なら」



勉強会なんて、学生時代ぶりだ。
教科書を見て、懐かしさを感じた。