純情女子と不良DK



「で?で?二人ってどこで知り合ったの?あ、知り合ったんですか!」

「つかその前に自己紹介しといた方がよくない?」

「あ、俺は塚本良介!好きなように呼んでください!優聖とは中学からの仲ッス!で、俺らはなんて呼べばいいっすかね?」



 まるで嵐のようだ。
次から次へと飛んでくる質問に葉月は目がまわりそうだった。
助けを求めるように優聖に視線を送るも、「コイツらこういう奴らなんで」とアッサリ切り捨てられた。
まぁ仕方ない。ここへきてしまった自分の責任だ。葉月はコホンと一つ咳払いをした。



「えーと、まず成瀬君とは近くにあるドッグランドで知り合いました。日高葉月です。どうぞお好きなように呼んでください」

「ハイ!はーちゃんって呼んでいいですか!」

「うっわ、いきなり馴れ馴れしいな…」

「だって好きなように呼べって言ったじゃーんっ」

「うん、うん。いいよなんでも。はーちゃんでもなんでも」

「やったー!よろしくはーちゃん!あっ、あたし神田彩音ね。あやちょんって呼んでっ」


彩音が葉月の両手を取ってブンブンと勢いよく振った。
あやちょんと呼ぶかは置いといて、見た目はギャルでちょっと怖いけどいい子なのかもしれない。髪の毛…金髪だけど。



「私は相川ひまり。ひまりって呼んでください」

「うん。ひまりちゃんね!」


(この子は比較的、この中では常識人…って感じがするかな)

ひまりを見てそう思った。
良介や彩音とはまた違って、きっと一番まともなんだろうな、とも思った矢先。


「で、二人はどういう関係?」

「………へっ?」



ニヤリと笑って葉月と優聖を交互に見るひまり。
その顔はまるでどこぞの極悪人のようで…。
ああ…この子は、この子だけは唯一普通な子なんじゃないかって、そう思っていたのに。
この悪人面のような表情は、うん。普通じゃなかった。


「実はさ~、この前コイツと学校から帰ってる時に、」

「おい、良介」

「え、いいじゃん別に~」


返事に困っていると、良介が楽し気に口を開いた。
それに対し優聖が迷惑そうに、やめろと言う。
ひまりと彩音は顔を見合わせ、悪戯っこのような笑みで良介に詰め寄る。


「なになにー?」

「帰ってるときにー?」

「ちょうどドッグランドで犬と遊んでる日高さんがいてさー、優聖と俺それ見てたんだよね~。優聖は“あ、またあの子いるー”みたいな感じで。だからこうやってまさか日高さん本人と知り合っちゃってんのすげーなーって」

「え!じゃあ、はーちゃんの事は元々知り合う前から知ってたってこと?」

「運命…」

「はぁ…もうめんどくせぇコイツら…」



 優聖は心底面倒くさそうに頭をかいて溜息をはいた。
そんなこと、いちいち言わなくてもいいのに、と。
葉月が嫌がったりしていないか気になって、彼女の方へ顔を向けた途端思わず目を丸くした。
てっきり困ったようなそんな表情をしているのかと思いきや、あろうことかキラキラした目で優聖を見ていたのだ。



「え…日高さん?」

「成瀬君、前から私のこと知ってたの!?なんかそれってすごいね!それでこうやって話してるんだもん。ほんと運命かもね!」

「…は」



純粋な笑顔でそう言う葉月に優聖はポカンとしてしまった。
あまりそういうことは簡単に口にしない方がいいんじゃ、と思ったがあえて言わないでおいた。
拍子抜けしたような優聖の肘を良介がニヤニヤしながら突っついてきたので、その頭を思いっきり叩いてやった。