純情女子と不良DK



 リビングから出て部屋まで向かう途中、優聖は一人ぶつぶつ文句を零していた。
こういう部分も彼にはあるんだな、と葉月は思う。
そして、さっきの言葉を思い出して目を細めて優聖を見た。



「ところで、お母さんに私の話してたの?どんな?」

「え?いや、なんか頭悪そうな人がいるんだけど実は年上だったーみたいなそんな話を」

「酷い…!」



 頭悪そうってそこまで言う!?と葉月はショックを表すかのように顔を両手で覆った。
これでも学生時代は成績はクラスの上位トップ10には入ってたし学年では常に20位以内をキープしてきたのに。
心外だ。とても心外である。


「あ、ここが俺の部屋です」

「え?わっ」



 案内された優聖の部屋はシンプルで綺麗に片されていて、高校生男子の部屋とは思えなかった。
現に洋平の部屋は物凄く汚いし。高校時代から。



「成瀬達やっと来た~!おっそいよ~!」

「待ちくたびれすぎて優聖のアルバムを拝見してました!」

「…は!?」



 部屋の真ん中にあるテーブルに教科書……ではなくアルバムを広げている良介達に優聖は思わず大きな声が出てしまった。



「成瀬ってこん時からもう出来上がってたんだねぇ!超可愛い~」

「日高さんも見る?」

「あ、ちょっと見たいかも…」

「こら」



優聖の幼少時代。ちょっと気になる。
吸いよせられるように三人の輪に入ろうとする葉月の首根っこを優聖がすかざず掴んだ。
そして素早くアルバムを奪い取り、すぐさま元あった場所へ戻す。


「ちぇ~、ケチ成瀬~」

「優聖のケチんぼ~」

「うっせぇ。つか良介お前は何回も見てんだろ」

「えー、忘れちゃった~」

「忘れちゃった~じゃねーから」



 すぐさましまわれてしまったアルバム。
葉月は少し残念に思いながらも、ブーブーと口を尖らせて文句を言う良介達を見て苦笑いを浮かべた。
さて、今から自分はこのハイテンションな若者集団を相手に勉強を教えなければならない。
居づらいとか気まずいとか、もうここまで来てしまった以上そんなことは思ってられないわけで。
もうどうせ教えるなら、手は抜かずきっちり教えて帰ろうそうしよう!うん!
と、気合いを入れた。



「ではさっそく勉強しましょうか…!」

「えー、もおー?はやくなーい?ねぇひまり~」

「確かに。もうちょっと喋りたいよねぇ。日高さんのこととか?」

「え」

「あ!俺も!」

「お前ら……」

「いいじゃんいいじゃん!日高さん!こっちこっち!」



あの…勉強を…、と小さく言葉をもらす葉月だったが、勉強はもうちょい後~!と言う彼女達に何も言えず、自分の隣をポンポン叩く彩音の隣におずおずと近づきその隣に腰をおろした。