「まぁ~!いらっしゃい良介君に、それも何だかたくさんお友達まで連れて~!それも可愛らしい女の子っ。ちょっと優ちゃん女の子連れてくるならはやく言いなさいよもぉ~」
「急だったんだって…」
「うお~!成瀬ん家めっさ綺麗!ひろ!あ、成瀬ママお邪魔します!」
「俺最近来たばっかだけどね~」
「どうぞあがってあがって!冷蔵庫にちょうどロールケーキがあったから、それ用意して部屋まで持っていくから」
「はーい!」
優聖の家に到着し、玄関先で優聖の母が出迎えてくれた。
まず一番の印象、とにかく美人。
美形は美形しか産まないということなのか……、と思わず優聖と優聖の母をまじまじ見比べてしまった。
「優聖の部屋は階段上がってすぐだぜ!」
「おっしゃ行くぜ~っ」
「彩音うるさい!」
「お前ら俺より先に行くなっつの」
良介を先頭にどたどたと階段を駆け上がっていく三人に、元気だなぁ…と感心してしまうほど。優聖は疲れきったように深く溜息を吐いていた。
さっそく優聖の部屋に入った、彩音と4ひまりの「うお、綺麗!」と驚いたような声が上から聞こえて来た。
「日高さんもどうぞ遠慮しないで」
「あ、うん!…と、その前にこれ渡さないと」
「俺が渡しとくんで大丈夫ですよ。日高さんも部屋行っちゃってください」
「いやいや、ちゃんと自分から渡さないと意味ないでしょっ」
手元にぶらさがる差し入れの紙袋を思い出した葉月。
突然お邪魔しちゃうわけだし、なにより優聖の高校の同期でもないわけだ。
ちゃんと自分で渡さないと。
そう言って、優聖の母のいるリビングへ向かった。その後ろから優聖もついてきた。
「そこは大人っすね」
「そこはってどういう意味かな成瀬君。というかこんなの常識だから!」
ムッとして振りかえって小さく優聖を睨めば、目を逸らされ口笛を吹かれた。
とことん年上として見てないなこの若者め、なんて思いつつ台所に優聖の母を見つけ速足で近づく。
「あ、あの!成瀬君のお母さん」
「うわぁ!?」
「え!?すいません!」
背後から突然声をかけられたことに驚いたのか、優聖の母が大袈裟なほどに肩を跳ね上げた。
葉月は慌てて一歩後ろへ下がりながら謝った。
「え?あ、ああ!優ちゃんのお友達!」
「母さん驚きすぎ…」
「だってもうみんな部屋に行ったものだとばっかり~。はぁびっくりした」
「こっちは母さんの声にびっくりだよ」
「え~」
子供のように口を尖らせる優聖の母。
なんとも若々しくて可愛らしいお母さんだなぁ。なんて思う。まぁ実際見た目も綺麗で可愛らしいのだけれど。
まぁそれは置いといて。
葉月は紙袋を優聖の母に差し出した。
「今日は突然お邪魔してすみません…。これ、たいした物じゃないんですけれど、良かったらご家族みなさんでどうぞ」
「へっ?」
目を何度も瞬かせ、キョトンとしながら葉月からの差し入れを受け取る。
やがて「まぁ!」と嬉しそうに頬に手を添えてキラキラした目で優聖を見つめた。
「優ちゃんがこんなしっかりした女の子を連れてくるなんて……!」
「え、えっと」
「日高さん、気にしなくていいから。つか渡したし行きましょう」
「え、日高?今日高って言った?優ちゃん」
「………」
瞬間、優聖の顔が「あ、しくった」とでも言うような顔になり葉月は思わず小首をかしげた。
その途端、優聖の母はキラキラした目で葉月を見た。
「あなたが日高さんね?優聖からよく話しは聞いてるわ!」
「そ、そうなんですか…?」
「うんうん!私もね、優聖が高校に上がる前まではよくそこのドッグランド行ってたんだけどね~。でも時間帯バラバラで…。もしかしたらあなたにも会えてたかもしえないのに~!あ、下の名前は?」
「葉月です…日高葉月…」
「葉月ちゃん!」
「は、はい」
テンションが上がったようで、止まることなく喋り続ける優聖の母に圧倒され葉月はただただ頷くしかなかった。
「だっー!もう、母さんホントうるさい。日高さん、はやく」
「わっ、はい!」
痺れを切らした優聖は葉月の腕をつかんで、無理やりその場から退散した。
後ろから、「ゆっくりしてってね~♪」と陽気な声が聞こえ、思わず小さく笑ってしまった。
