「ごめん!ちょっと遅くなっちゃった!」
「全然いいけど…って、なんかめっちゃ買ってない!?」
「あはは。お菓子とかジュースとかも買ってきちゃいました。でも急いでたから適当に選んじゃったけど」
15分程経ったところで、走って戻ってきた葉月の手には大きな袋が二つと差し入れのために買ったクッキーの詰め合わせの箱が入った紙袋がかかげられていた。
そんな葉月の手荷物に一同は驚いた。彩音が目を丸くさせながら袋の中を覗きこんでいた。
「お菓子とかは家の近くのコンビニで買うから良かったのに」
「ごめんね…!でもついでに買っちゃおうかなって」
「袋貸してください。俺持ちます」
「え、いいよ!」
「いいから」
そう言って半ば強引に優聖にスーパーの袋を奪われてしまった。
「優聖優しい~~」
「紳士ですなぁ」
「イケメン~!」
「お前ら殴るよ?」
その光景をニヤニヤしながら見る三人。
うん、確かに三人の言葉通りだな、なんて思いながら葉月は思わず小さく笑った。
「てか日高さんまじすいません。会ったばっかなのになんかパシリみたいな感じにさせて。お金、着いたらみんなで割り勘して払うんで」
「あ、そうだそうだ!日高さんあざっす!あたしもちゃんと払うんで!」
突然、ひまりが申し訳なさそうに謝って来たので葉月は一瞬目を丸くさせた。
その後の彩音と良介にも言われ、なんだいい子じゃないか。と思った。
「うんん!いいよ全然。返さなくても。年上だしこれくらいさせて」
たかがお菓子やジュース。
これくらい自分がお金を出しても問題無いし、相手は年下の高校生だ。
大人としてこういうところも大人らしくしないと。
(年上らしく、年上らしくね!)
「…え、年上って日高さんいくつなんすか?」
「私てっきり同い年かと思ってたんだけど」
「あたしも~。え、年上なの?」
ピシリ、と体が固まった。
優聖は、自分が何者なのかも彼女達に伝えなかったのだろうか。いや、この反応を見る限り一切自分の情報は伝えられてなかったのだろう。
ただ、勉強を見てくれる人がいる…という話だけで。
いや、そんなことはどうでもよくて。
問題なのは、彼女達が葉月が年上だということに驚いているということだ。
「……私、これでも二十歳なんだけど…」
しばらく沈黙が走った。
そして、良介、彩音、ひまりの「えええ~~~!」という叫び声が響いた。
隣で優聖がおさえきれないといったようにクツクツ笑うのでそれがとてもムカついた。
要するに、やっぱり自分は童顔なんだということだ。
「見えない!全然見えない!」
「普通に同い年かと思ってた…まさかの四つ上…」
「優聖お前、年上好きだったのか!」
「良介何言ってんの?」
一人だけおかしな事を言ってるがそこは気にしないでおこう。
葉月はガックリと肩を落とした。
「そんなに二十歳に見えないんだ…」
「若い!若いってことだよ!日高さんそんな落ち込まないで!!どうしよひまり日高さん目が死んでる!」
「とりあえず蘇生を…。心臓マッサージを…」
「なんでだよ」
スパン、と彩音とひまりの頭をはたく優聖。
その中で一人ブツブツと何か呟く葉月もかなりおかしかった。
