純情女子と不良DK




“土曜日、13時に駅前の時計塔の前で”



(駅前って、普通に最寄りの駅でいいんだよね…)


 当日になり、指摘された待ち合わせ場所まで向かってる途中になって不安になった。
駅前とだけで、どこの駅とは言われてない。けど多分最寄りの扇橋駅で合っている…はず、と自分に言い聞かせた。
妙に緊張してきた。思えば、洋平以外の男の子と二人で会うなんていうのは初めてだ。
ばくばくとうるさい心臓。落ち着かせるようにゆっくり深呼吸をした。



「あ、日高さん」

「お、おっす」

「おす」



待ち合わせ場所には既に優聖がいて、ぎこちなく挨拶をした。



(なんか、なんかこれ、デートの待ち合わせみたい…!)


 つい、そんなことを思ってしまい慌てて首を横に振った。
けれど、ほんといつ見てもかっこいい。私服もいつもよりちゃんとしててかっこいい。
いやいつもちゃんとしてるんだけど、ドッグランドの時は制服が汚れるからと言ってラフな私服で来るので今はこう…今時の高校生の男の子!という今時な感じの私服だ。
と、自分でも意味不明なことを考えていた。
まぁこういうかっこいい子は何を着たって結局かっこいいのだが。
キョロキョロと辺りを見渡す優聖をバレないように見つめながら思った。



「というか、さっきから何キョロキョロしてんの?何か探してる?」

「あ、いや。アイツらもそろそろ来るかなーって。今メール来たから」

「………え、アイツらって?」

「……え、もしかして俺言い忘れてた…?」



やべぇ、といった表情になる優聖に葉月は何となく嫌な予感がした。
その瞬間、背後から陽気な声が聞こえた。



「おーう成瀬ー!お待たせ~!」

「遅くなってわりィ!」

「塚本が腹減ったーとか言ってコンビニ寄ってたら遅れた…」

「だって朝から何も食ってねーんだもん」

「えっ、てか誰その子!もしかして成瀬が言ってた例の勉強見てくれる人!?」




 突然現れた彩音とひまりと良介。もちろん葉月はこの3人のことなんて知らない。
自分を見て、騒ぐ彼女達に葉月は白目をむきそうになった。
お前らうるさ…と呆れたように言う優聖。
まさか、友達も来るなんてそんな話は聞いてなかった。硬直してフリーズしていると心配そうに、良介が顔の前でひらひらと手を振って来た。



「大丈夫ですかー?固まってるけど…」

「…はっ!あ、うん、大丈夫っす…」

「てか、あれ?なんかどっか見たことあるような」

「え?」



 そう言ってじっ、とこっちを見てくる良介。



「うっわ、何いきなり口説いてんの!やらしー」

「いやいや違うって!ほんと、どっかで見た気がして」


どこだったっけなぁ、うーん、と考え込む良介はやがて思い出したようにポンと手を叩いた。



「ああ!あん時ドッグランドで見た人!えっ、優聖お前この子と知り合いになったの!?」

「良介お前ほんとうるさい。つーか日高さんごめん。勉強会、コイツらも来るってこと言い忘れてた」

「え、成瀬言ってなかったの?」

「言えよーちゃんとー!アホ成瀬ー」

「だから忘れてたんだって…」



正直圧倒されている。
なんだろう。この懐かしいテンションは。なんというか、まさに高校生といった感じだ。
それに高校の時に、あまり関わらないような系統の子達だからなかなかついていけない。



「ごめんね?いきなりびっくりしたよね!成瀬が、勉強教えてくれそうな子が知り合いに言うっていうからさ…。私達みんな頭悪すぎて…。嫌だろうけど教えてくれるとめっちゃ助かります」

「え、えっと…」


比較的見た目は落ち着いた感じの少女、ひまりが申し訳なさそうに言う。


「あたしからも頼む!!補習だけは!免れたい!どうか希望をください!」

「俺からもっ」



他の二人からも手を合わせて必死にお願いされた。
葉月は困ったようにオロオロしながら優聖を見た。


「教えてください、先生…!」

「せ、先生……!……し、仕方ないなぁ」

「(単純…)」



優聖に先生と言われ悪くない気分になった、案外単純な葉月であった。
良介達は葉月の承諾の言葉に万歳をして喜んだ。