一人で勝手に騒ぎ始める花に違う違うと否定し、優聖はドッグランドで知り合った散歩仲間的なものだと言えば、あからさまにテンションを下げて「えー」と口を尖らせた。
「でもアドレス交換してる~」
「だからこれはそういう変な意味はないから!多分アレだよ。散歩仲間としての連絡ツール?」
「何故疑問形」
アドレスを交換した時は、そんな必要あるのだろうかとか思っていたけど、多分これから優聖とはドッグランドでよく会うことになるだろうしその連絡ツールみたいなものだろう。
実際ドッグランドによく来る何人かの人たちとは連絡先を交換して、今日は来る?みたいなそんなメールのやり取りだってすることもある。
優聖もおそらくそれだろう。
「なので、花が思ってるような甘い展開にはなってません!」
「でもこれからそうなるかもよ?」
「いやいやいや!高校生だよ…。四つも離れてるし私も成瀬君もほんとそういうんじゃないから…」
「四つ、ってことは高1か。いいねぇ~可愛い!その子かっこいい?」
もはや葉月の言葉は全く聞いていない。
楽しそうに目を輝かせる花に口もとを引き攣らせる。
「あー…うん。かっこいい、と思う」
「まじか!うっわ、いいなあ。どーいう系の子?真面目?チャラい系?」
「見た目はちょっと怖いっていうか、クラスとか学年で目立つような中心にいるような、そんな感じの子。でもいい子だよ」
「おや、随分と褒めてるね」
「もう、花……」
「ごめんごめん!ちょっと意地悪しすぎた」
困ったように眉を下げる葉月に花は慌てて謝った。
今まで葉月の浮いた話しなんて全く無かったから、今その優聖という人物の存在に花自身少し期待のようなものを抱いていた。
まぁそんな葉月がいきなり彼氏ができるなんて、そんなことは無いのは分かってはいた。
「で、驚いたのがその子、南扇なんだって」
「えっ!じゃあ後輩じゃん」
「すごいよねっ。びっくりした」
「それはびっくりだね。その成瀬って子もよくドッグランド来るんだ?」
「うん。最近見るね」
「へぇ~!いいなぁ。イケメン高校生と知り合えるなんて」
「…紹介する?花可愛いし、大丈夫だと思うよ!」
「いやいやいや真顔で言わないで。大丈夫って何!羨ましいとは思うけどそこまでしてもらわなくていいから」
それに付き合うなら絶対年上って決めてるからあたし、とキッパリ言い切る花に葉月は「そっか」とメール画面を眺めながら言った。
優聖と花がもし付き合ったらまさに美男美女カップルだなぁなんてそんなこと思いながら。
「で、はやくメール返してあげたら?」
「あっ、忘れてた!でも何て返そうか」
うーん、うーん、と悩みながら部屋を見渡す。
こっちも何か写真を撮って送った方がいいかな、と思い何かないかと思ったのだ。
結局何も思い浮かばなかったので、テーブルに並べられたお菓子を写真におさめて送信しておいた。
《私は今、友達と家でお菓子パーティしてるよ》
《いいっすね。俺これから昼飯です》
今度はお弁当の写真付きで返って来た。
(えーと、えーと…)
さすがにこっちはもう何も撮るようなものが無かったので、《おいしそうだね》と一言返した。
「…散歩の連絡ツールじゃないんだ?」
「……あれ?」
ずっと葉月のメールのやりとりを眺めていた花が目を細めながら言えば、葉月は自分でも変だなと思い小さく首を傾げたのだった。
