純情女子と不良DK



「雨って嫌だなぁ~。せっかく今日髪切りに行こうと思ったのに」

「切っちゃうの?もったいない!」

「そんなに短くするつもりはないよ」



 長い髪の毛を指でくるくる絡ませながら憂鬱そうに溜息をこぼす花。
葉月は花の長くて綺麗な髪が好きだったので、切ると聞いて少し残念な気持ちになった。



「どうせ仕事で結んでるしさ~…」

「あ、そういえば私の持ってるスマホで新しいの出たよね」

「そうそう!機種変するっ?」

「まだいいかなぁ」


 花は携帯ショップ勤めで、新しい機種が出るたびによく葉月や洋平に勧めていた。
携帯ショップはどんどん新しい機種が増えていくので毎日が勉強だと言って、とても大変そうだった。
けれど、彼女自身楽しそうにやっているらしいので何も問題は無い。



「そういえばこうやって葉月の家来るのって久しぶりかも…」

「おおっ、確かに。花忙しそうだったしね」

「ホントね。仕事は楽しいけどやっぱ疲れるよ~…。葉月が羨ましいなぁ。あたしもずっと家でダラダラしてたーい!」

「結構失礼な事言ってるの気づいてる?」



 ベッドの上でじたばたと足をばたつかせる花に思わず目を細める。
まぁ実際ダラダラしているというのに関しては……間違ってはいない。


「なんか眠くなってきた」

「人ん家来ていきなり寝るんかい!寝てる間に私がお菓子全部食べちゃうかんね」

「太るぞ葉月さん」



 うとうとしている花に呆れながらお菓子に手をつけていると、スマホが鳴った。
サイトやメルマガだろうなと思って画面を開けば優聖からのメールだった。
どうかしたのだろうか、と思い受信BOXを開く。


《前の席の奴、寝癖やばくないですか?》


そう書かれた文の後に、画像が添付してあったのでタップして開けば髪の毛があっちへこっちへはねている男の子の後姿の写真があった。

(……どうやったらこんな寝癖つくの?)

あまりの寝癖の酷さに思わず画像を凝視してしまった。



「成瀬優聖…?誰それ!」

「うわぁ!!」


いつの間に起き上がっていたのか、花が後ろからスマホ画面を覗きこんでいた。
大袈裟なほどに驚く葉月に花はしばらく目を細めた後、ハッとしたようにベッドからおりた。



「も、もしかして!!かれ、彼氏!?彼氏できたの!?え、いつ?そんな名前の奴、あたし知らないよ!誰!?」

「ちょ!花、お、おお落ち着こう!これは彼氏とかそんなじゃ、」

「しかもこれ…待って!高校生じゃない!?これ制服だよね?」

「いやこの写真は本人じゃないから!こ、高校生ではあるけど」

「高校生の彼氏!?まさかの年下……。今まで彼氏ゼロだった葉月がいつの間に…」

「もうー!だから違うってば!」