「桜木くん……転入生を脅かしたらいけませんよ。本気にしたらどうするんです」

「え?」


声に振り向くと榊先生が穏やかな表情で笑った。


「現代の時代に鬼なんていませんよ。さあ、席に座ってください。桜木くんも」


そういえば、さっきも鬼って…
今の話は?なに?
鬼がいる里なんて…


「―――席は柊くんの前が空いてるので、つばきさんはそこに」

「…はい」


斜め後ろの席を見る。
桜木くんって言ったっけ。

榊先生が止めるのも聞かず教室を出ていってしまった。


「あの、わたし…」

「つばきさんが悪いわけではありませんよ」


榊先生は苦笑いで少しだけため息を吐いた。

そのあと、すぐに授業が始まって隣の女子が机をくっつけて教科書を見せてくれた。