それだけ言って去って行こうとした桜木くん。
「待って」
思わず袖を掴んだら、周りにいた女子からキャーと黄色い声があがってすぐに手を離した。
「あの、さっきの話、わたしよくわからなくて。鬼がどうとかって話してたでしょう?」
ここは鬼が住む場所だとか…
学校だとか…
喰われちゃうとか…
「さあな。俺には関係ねえし」
「桜木」
「あ、ひとつだけ教えてやる。あんた、一週間以内に死ぬぜ」
「……え?」
「俺の言いたいことはそれだけだ」
「死ぬ?」
「ここに転入してきたことを恨むんだな」
わたしを覗き込む漆黒の目がまた黄金色になった。
その瞳がわたしから離れて周りを見回すと桜木くんを畏れるように生徒が下がった。
「へえ、……鬼呼びの力、ね」
どんな鬼を引き寄せるんだか。
そう言って、桜木くんはわたしの前からいなくなってしまった。



