12月に入り、高校最後の定期考査も終わり、3年生は自由登校となった。


私は相変わらず図書室に入り浸る毎日だ。



朝7:00から19:00まで昼ごはん休憩以外図書室から出ない。



いつ来ても私が自習スペースの奥で一人で勉強しているものだから、中学生に「図書室の花子おばさん」と呼ばれ始めた。




うう、おばさんはきついよ


まだ18だよ?





中学生からはおばさんに見えるのね…


傷心…






「そろそろ閉めますよー」



司書の先生の声が図書室に響く。




もうそんな時間か。



私は手早く荷物をまとめて図書室を出た。






うわ、寒そう。




正面玄関から外を見ると木々が風で揺れていた。



マフラーして、手袋して、耳あてして…




よし、完璧。





完全なる防寒対策をして外へ出る。



ひゅう…



頬に刺さるように風が吹く。

寒っ!!


はぁー



息を大きく吐くと、たちまち白くなった。




すっかり日は落ちてイルミネーションで装飾された商店街を歩いて、ああ世間はクリスマスなんだなと思い出す。




すれ違うカップルはどのペアもぴったりくっついていた。


彼女の手を握って自分のコートのポケットにいれる彼氏


肩を抱いて歩く二人




もしかして、すごくもしかしたら私も仁と歩いてたのかな…




クリスマスだから、いつもより特別な日だから




二人で観覧車乗ったりプレゼント渡したり、手をつないで寄り添ったり




いろんなことが浮かんでは消えていった





仁と学校以外で話したり会ったりすることはもう完全になくなっていた。




勉強に一筋だったから何も寂しくなかった。




だけど、一人を自覚した途端なんだか心が落ち着かない。






今、仁は何してるんだろう…?





ふと手にとった携帯電話




九月までは毎日のようにかけた仁の電話番号





電話、しよう、かな…





仁の声を聞いたら、どうなるんだろう



また会いたいって思うのかな?



もっと寂しくなるのかな?




私も仁と二人で一緒にいたいって思うのかな?




でも…





私、2か月間外で会ってないし話もしてないよ?



それって、全然一人が辛くないからだよね?



仁がいなくても大丈夫な自分になったからだよね?




ねえ、私は仁のこと、どう思ってるの?




本当に好きなのかな?






電話帳の仁のページを見つめて考える。





だって、仁だって何もしてこなかった。


ていうことは、私のこと何も思ってないんだよ



私も。



2か月間何もなかったのに平気だってことは、つまり





ある一つの結論に達しようとしたとき、携帯電話が鳴った。





見慣れた番号。





仁だ。






迷いながらも電話を取る。




「もしもし…?」

「おう、久しぶり」

「久しぶり…。どうしたの、急に」

「今、何してる?」

「家に帰る途中。商店街だよ」

「そうか…」

「なにかあるの?」

「ああ、ちょっとだけ時間いいか?」

「うん、大丈夫」

「そうか、センキュ。じゃあ公園に来て」

「了解」


公園に来て、か。

なんだかモヤモヤする。

なんでだろう?